山中でうっかりの眠りから目覚めた時
これは、山梨県の山中で体験した話です。
私は狩猟家です。
ある日、山でマチをしていた時にうっかり寝てしまいました。※マチとは、獲物が出そうな所でじっと待つこと
ふと目が覚めると、目の前に大きな”犬のような生き物”がいます。
シェパードくらいの大きさに、獰猛(どうもう)な顔つき。
でも、目はじっと私を見ているだけで敵意がありません。
「寝ちまったよ。ずっといたのかい?ごめんな、仲間に合流しなくちゃ。お前もご主人が探しているんじゃないの?お先に下りるね」
私は座り続けでこわばったケツを揉みほぐしながら、銃を肩に掛けて話しかけました。
・・・と、その時、『私には主人はいない。私は私だ。気をつけて帰れ』と、頭の中に声が聞こえました。
瞬間、私は動けなくなりました。
頭も真っ白です。
そのままその犬のような生き物を凝視していると、ゆっくりと笑った後、山の頂へとゆっくり歩き去っていきました。
姿が見えなくなってから私は一礼をして、銃から弾倉を抜いてゆっくりと帰りました。
(終)
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