自殺者が後を絶たないトンネルの途中で
これは、じいちゃんから感じた霊能力のような話。
ある日、「たまには外でご飯を食べよう」ということで、父と母、そして俺と妹の4人で街まで出た。
じいちゃんとばあちゃんはお留守番。
うちの家がある場所はとても辺鄙な田舎なので、外食が出来る店まで車で30分程かかる。
その途中、山道を通る。
そして晩ご飯も済み、帰り道でのこと。
行きにも通った山道を通り、道中にあるトンネルを走っている時だった。
ちなみに、このトンネルはほぼ断崖ギリギリにあり、“自殺者が後を絶たない”と有名な場所。
そのトンネルの途中で、前触れもなくエンストが起きた。
暗い所がダメな母が真っ先にパニックになり、俺たち子供にもそれが伝染してしまう。
「早く出して!!」と、必死な母と俺たち。
ほどなくしてエンジンかかり、無事にトンネルを抜けられた。
だが帰宅後、車の音を聞きつけたのか、戸口まで出迎えに来てくれたじいちゃんが開口一番「入るな!!」と大声で叫んだ。
俺たち4人全員はビックリした。
そして、じいちゃんは呆気に取られた俺たちの背中をバンバンと強く叩き始める。
じいちゃんの変わり様に、とうとう泣き出す妹。
もちろん俺も、かなり強い力で背中を叩かれた。
その後、じいちゃんは「まだ入るなよ!」と言うと、家の中から仏壇に供えてあるお神酒を持ってきた。
そして全員に、「飲まなくてもいいから口に含め」と言って順に渡す。
全員が酒を口に入れて、しばらくした頃にいきなり母が嘔吐した。
普段は父の晩酌にも付き合うくらい、酒に弱くない母なのに。
それを見たじいちゃんは母の背中を執拗に叩き、再度酒を口に含ませる行為を繰り返した。
母が吐き出さなくなると、ようやく「家に入ってもいいぞ」と許可が出た。
霊やら変なモノは見なかったが、じいちゃんの真剣な顔が凄い怖かったのが今でも忘れられない。
そのおかげか、母はその後も変わりなく元気に過ごしている。
(終)