学校にあった二宮金次郎銅像の噂話
これは、母校にあった『二宮金次郎の銅像』にまつわる不思議な話。
二宮銅像に対して僕と友達はいつも、「背負っている薪の数が数える度に本数が違うぞ!」と、よく騒いでいた。
そうやって二宮さんにちょっかいをかけまくっていた小3の夏休みのこと。
犬の散歩に出かけた僕は、誰もいない小学校へ入った。
昼間だったこともあり暑くて、小さいバケツに水を入れて犬に飲ませていたのだが、二宮さんが気になって近寄った。
こんな所に立っていて暑そうだなぁと、面白半分に二宮さんに水をかけてみた。
バケツに残っていた水が少なかったので、二宮さんの腕と本が少し濡れただけだった。
そしてなんとなく濡れた部分をじっと見ていたら、辺りが一瞬真っ白になった。
眩しさはなかったが、瞬きをすると景色は元通りに。
ただ、二宮さんが開いている本のページだけが乾いていた。
腕は濡れているのに。
僕はビックリして、慌てながら帰宅した。
そんなことはすっかり忘れたまま中学生になったある日のこと、同じ小学校だった友達と、懐かしみながら二宮さんの話をしていた。
トイレの花子さん並に、僕らの小学校では二宮銅像にまつわる不思議な話は有名だったから。
でも、1つだけ僕の知らない話を聞いた。
「二宮さんは読んでいる本のページをめくる瞬間は誰にも見せない。ページをめくる時は見ている者の視界を眩ます」
小3の夏休み、あの時の一瞬の出来事は、二宮さんが本をめくった瞬間だったんだと僕は納得した。
他にも、「二宮さんは定期的に図書室に本を借りに来る」という話もあった。
(終)