川辺で見つけた小さなお守り
山には色んな物が捨てられている。
これは昔、山の中で見つけた『小さなお守り』の話。
そのお守りは、赤地に綺麗な金糸の刺繍がしてあって、泥土も付かず雨露にも濡れずキラキラとして、まるで誘うように川辺に落ちていた。
退屈しのぎの夜の散歩中、そんな物を見つけて触れるなと言うのは到底無理なことで、吸い寄せられるようにそれに手を伸ばした。
その瞬間から、私の意識は翌日に飛んでいた。
私を探しに来たお婆ちゃんに頬を叩かれて川辺で目を覚ますと、すでに日は昇っていて、その時になって自分が何時間もその場で気絶していたのだとようやく気付いた。
そして帰り際、視界の隅に見えたのは、静かに川を流れていくあのお守り。
不法投棄や動物の骨なんかより、よっぽど得体の知れないものが山には捨ててあるんだなぁ…なんて、どうでも良いことを考えたのを今もはっきりと覚えている。
(終)
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