演劇公演での照明さんと幽霊
早稲田の校舎にある、
演劇施設での話です。
他大学の私は友達と、
早稲田の演劇サークルの
お手伝い要員として、
演劇公演に参加しました。
汚れた校舎の中でも、
さらに奥まった所にある、
洋風の建物の中。
その小屋(演劇スペース)は
そこにありました。
数日ある公演も、
残すところ後ワンステージ。
裏方仕事をし終えた私は、
一緒にお手伝いで参加した
友達のラストステージを見届けようと、
客席に座りました。
そして開幕。
ところが、肝心の友達が
長い台詞の途中で、
上をぼんやり見たまま、
動きません。
素人にせよ、
ちょっと不自然なぐらい
上を向いて、
ハッとしたように
芝居を続ける友達。
・・・そして終演。
お芝居のセットや諸々の
片付けが終わって、
サークルの面々は、
飲み会の会場に向かいました。
友達と私は、
他の大学からの参加なので、
少し遅れて会場に向かいました。
入り口に入る前に、
友達に背中を突かれました。
友達は言います。
「今日、僕セリフとちったよね」
「あ、そうそう、あれ何?
みんなに対する嫌がらせ?(笑)」
実は芝居経験の浅い彼は、
早稲田の役者に見くびられて、
色々お小言もくらっていたので。
最後の最後に、
芝居を失敗させようとワザと、
彼が反抗的にヘマをやったのかと
思っていた私でしたが、
彼は困ったように、
「みんなには言わないけど
セリフ言おうとしたら、
バトンの間から照明さんが
顔出してるんですよ。
でも照明さん、
客席の一番後ろにいるんですよ。
で、
照明さんが入れるぐらいの
スペースは、
梁と天井の間に
あるじゃないですか。
誰か人いました?」
「いいや、本番中だし」
「上から見てる人は女の人で、
顔が青いゼラ(照明の色付けするセロファン)
の明かり当てたみたいに
青かったんです」
「見間違いだろう。
疲れてると色々見るさ」
話はそこで打ち切りました。
酒も飲みたかったし、
友達の話も作り話っぽくて、
なんだか真剣に
取り合えなかったのです。
でも、その回を担当してくれた
照明さんなんですが・・・。
顔がひょろりと長くて、
血色の悪い女の子。
で、その人に似た幽霊を
本当に見たとなると、
少し怖い気もします。
もう5~6年も前の話です。
(終)