肝試しのお化け役が
大学のサークル合宿での話。
うちのサークルは
毎年夏休みに1週間、
山梨のとある民宿で
合宿を行っていた。
その年、幹事になった俺は
最終日に肝試しを企画した。
お気楽なテニスサークルだけあって、
男女比率がほぼ半々。
くじ引きで男女のペアを作り、
お化け役が待機してる山道を
民宿に向かって歩く、
といった感じだった。
俺は最後のお化け役。
ジェイソンのお面をつけて、
包丁(玩具)片手に追いかける。
もう、面白いくらいに、
みんな叫んで逃げていく。
その晩は、飲み会。
みんなが「怖かった~」と
言ってくれたので、
お化け役のうちらは大満足。
そして次の日。
帰りのバスの中で、ふと、
昨日の肝試しの話になった。
「ほんと、昨日の肝試し
怖かったよね~」
「そうそう、特に最後のお化けなんか
怖かったよね~」
「ああ、あれで○○ちゃん、
腰抜かしたんだよ」
そうか、そんなに俺の
ジェイソンは怖かったか、
と満足していた次の瞬間、
みんなが奇妙なことを言い出した。
「そうそう、ジェイソンみたいな奴の
次のお化けだよな」
「うん。あの女の人、怖かったよねえ~。
あれ誰がやったの?」
白い着物を着た女の人が
赤ん坊を抱き、
動かずにただずっと林の中から
睨んでいたそうだ。
さっきも言った通り、
俺のジェイソンが最後のお化けだし、
小道具の中には、
赤ん坊の人形も、
白い着物もなかった。
(終)