終わりのない鬼ごっこ 1/2

これは、

俺が小学6年の時に、

 

同じクラスのSという奴との

間に起こった出来事です。

 

Sは、いつも挙動不審で、

訳の分からない奴だった。

 

授業中は

いつも寝ていて、

 

給食だけ食べて

帰っているだけ、

 

という感じだった。

 

もちろんクラスでは

馬鹿にされていたし、

 

俺も馬鹿にしていた。

 

今にして思えば、

 

軽い知的障害が

あったのかもしれない。

 

小学3年か4年の頃も

一緒のクラスで、

 

このSも含めた数人で、

 

鬼ごっこをやった事が

一度だけあった。

 

チャイムが鳴った後に

イスに座ったら終了、

 

というルールだった。

 

つまり、

チャイムが鳴った後に、

 

鬼を残して全員が

席に着いたら、

 

鬼が負けという事だ。

 

最初は俺がじゃんけんに

負けて鬼になった。

 

Sは一人だけ

トボトボ歩いていたので、

 

すぐSにタッチした。

 

Sは鬼になっても走らないで

トボトボ歩いていた。

 

チャイムが鳴っても、

それは変わらなかった。

 

チャイムが鳴ると、

 

みんな一斉に

教室に向かい、

 

自分の席に着いた。

 

S以外は全員、

自分の席に着いた。

 

「あいつ追い掛けて来ないから

つまんねーな」

 

「あいつなんなんだよ」

 

等と、

 

みんなでSの文句を

言っていた。

 

そして間もなくして、

Sは教室に入って来た。

 

そしてなぜか、

泣いている様に見えた。

 

Sはイスに座っている俺に、

真っ直ぐ向かって来た。

 

そしてあろうことか、

俺に殴りかかってきた。

 

どうやらイスから無理やり

立たせようとしたのだった。

 

それとほぼ同時に担任が

教室に入って来たので、

 

そのまま喧嘩にもならないまま

終わってしまった。

 

Sのやった行動は、

クラス全員が見ていたので、

 

Sと遊ぶ奴はもちろん、

話す奴もいなくなってしまった。

 

そして、

 

Sの半径5メートル以内に

近づかないゲーム、

 

というのがクラスで

流行り始めた。

 

これはSと同じクラスの間、

ずっと続いた。

 

・・・そういえば、

 

Sが授業中に寝るように

なったのも、

 

この頃からだったような

気がする。

 

小学6年の7月くらいに、

席替えでSと同じ班になった。

 

これは、

 

狭い会議室を一緒に掃除する

事を意味していた。

 

さすがに近づかないゲームは

終わっていたが、

 

関わりたくなかった。

 

この会議室は先生が

見ていない場所なので、

 

真面目に掃除をする者が

いないところだった。

 

俺は、手の平の上に

ホウキを乗せて、

 

バランスを取って

遊んでいた。

 

他の奴らも、

 

適当にホウキを振り回して

時間を潰していた。

 

Sだけがクソ真面目に

掃除をしていた。

 

掃除の終わりを告げる

チャイムが鳴った。

 

みんなそれと同時に

ホウキを掃除箱に放り込んで、

 

逃げるように会議室を

出て行った。

 

俺はホウキでバランスを取る

遊びの途中だったので、

 

バランスを崩して終わったら

ホウキをしまおうと思っていた。

 

そしてバランスを崩し、

ゲームが終わった時、

 

会議室にSと二人きり

ということに気づいたので、

 

すぐにホウキをしまって

教室から出ようと思った。

 

そして同時に、

ヤバイ!と思った。

 

Sが掃除箱の前で仁王立ち

しているのだった。

 

今思えば、

 

ホウキをその辺にほっぽり出して、

教室から出れば良かったのだが。

 

ホウキが出ていると

怒られると思ったので、

 

Sに言った。

 

「そこ邪魔だからどけよ・・・」

 

Sは言った。

 

「あの時、タッチされてない」

 

そう言うと、

 

猛ダッシュでSは俺から

逃げて行った。

 

教室に帰ってからも、

 

Sは追い掛けてもいないのに、

俺から勝手に逃げ回っていた。

 

自分のイスに座ると、

 

Sはニヤニヤして、

勝ち誇った顔で俺を見た。

 

あの時の続きを

やっているのだろうか?

 

そしてこれは、

この日から毎日続いた。

 

最初は呆れていたし

相手にしていなかったが、

 

前に突然殴られた時、

 

やり返していなかった

事などもあってか、

 

凄くムカつくようになった。

 

しかし、

タッチでもしようものなら、

 

この馬鹿と鬼ごっこを

することになると思ったので、

 

必死に堪えた。

 

相手にしなければ

勝手に止めると思っていたが、

 

Sの行動は日に日に

エスカレートしていった。

 

トイレに行くのにも、

 

イスに座ったまま引きずりながら

行くようになったのだ。

 

そして、勝ち誇った顔で

俺を見てきた。

 

俺は、Sに腹が立って

我慢出来なくなっていた。

 

(続く)終わりのない鬼ごっこ 2/2へ

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