ずっと付いてくる一匹のカラス
クラスメイトのAと
一緒に下校した時、
一匹のカラスが目に入った。
電線とか塀の上とか、
わりと低い所を留まったり
飛んだりしながら、
気が付いたら
ずっと付いて来る。
恐ろしげな鳴き声と、
恨みがましい目をして。
Aに、
「あのカラス・・・
気持ち悪いね」
と言うと、
「だろ?あれ、ずっと
俺に付いて来るんだ」
と言う。
聞くと、
朝、外に出ると
すぐに飛んで来て、
周りに人がいない時は
攻撃さえしてくる。
追い払っても
すぐに戻って来て、
周辺で飛び回る。
そんな事が一ヶ月も続いていて、
「いい加減、気が変になる」
とAは言う。
一ヶ月前といえば、
同じくクラスメイトのBが
事故死した頃。
崖下で遺体が発見された。
足を滑らせて
転落死したらしい。
発見したのが偶然にも
俺の知り合いのおじさんで、
「打ち所が悪かったらしく、
頭がぱっくり割れててね・・・」
って話を聞いた覚えがある。
「遺族には言ってないんだけど、
脳みそがはみ出していて、
それをカラスが食ってたんだ」
人の脳を食ったカラスは、
その人の記憶も食うとでも
言うのだろうか。
あのカラスは、
どのようなBの記憶を
食ったのだろうか。
記憶を食ったとしたら、
なぜAに付きまとうのだろうか。
あれは事故死だった
はずなのに・・・。
(終)