太らないように気を遣っていた彼女

食事

 

若い女性というのは、

 

みんながみんなじゃないんでしょうが、

充分細くてもダイエットをしたがる。

 

これは、

そんな女性が体験した話です。

 

彼女、

仮に名前を南原さんとしましょうか。

 

南原さんはその時まだ大学生で、

 

大学のラグビー部のマネージャーを

していました。

 

南原さんは芸能人で言うと、

栗山千秋さんによく似た顔立ちをしていて、

 

体も栗山さんみたいに細いんです。

 

ラグビー部の打ち上げや

新人歓迎会なんかでも、

 

あまりお酒も飲まないし、

食べない人なんです。

 

南原さんは結構美人ですから、

部員の中にもファンはいて、

 

「かわいいね」

「きれいだね」

 

なんて、よく言われていた。

 

ある年の秋の暮れ、

彼女に告白してきた男がいたんです。

 

名前は仮に山県君としておきますが、

彼はラグビー部の部員ではなかった。

 

どういう接点があったのかというと、

同じ金融制度の授業を受けていて、

 

その授業では五人一班でもって

授業の後半は議論をするのですが、

 

その山県君というのは、

彼女の配属された班の班長なんです。

 

それで、ずっと前から

彼女のことが気になっていて、

 

とうとう我慢出来ずに告白したわけだ。

 

彼女も山県君のことは嫌いじゃなかったので、

いいよってことで付き合うことにした。

 

それからは、楽しい時分です。

 

付き合い始めた頃は、

 

よく一緒に遊びに行ったり、

ご飯を食べに行ったりしたわけだ。

 

それで、

一緒に食事に行くのはいいんですけど、

 

南原さんは出された料理を

いつも残しちゃう。

 

太らないように気を遣って。

 

だけど、

 

そこは山県君が「しょうがないな」と言って、

残ったのを全部平らげていた。

 

それが、いつもの二人の

デートの風景だったんだ。

 

・・・だけど、

 

付き合い始めて半年経つか

経たないかの頃。

 

山県君が自転車に乗って

大学へ行く途中、

 

車に撥ねられて頭を強く打ち、

即死してしまったんだ。

 

南原さんもひどいショックを受けました。

 

元々あんまり食べない方だったのが、

遂に何も喉を通らなくなっちゃった。

 

さらに悪いことに、

自室に籠もりがちになって、

 

お呂やトイレ以外では、

家族と顔も合わせなくなった。

 

食事は母親が閉まったドアの前に置いて、

食べ終わった頃に、

 

また母親がドアの前に置かれた食器を

回収するようになった。

 

ところが不思議なことに、

 

籠もりがちになってからというもの、

食器が空になって返ってくるようになった。

 

それで母親は、

 

ひとまず食欲があるんならと、

少し安心したんだ。

 

そんなこんなで、

 

山県君が亡くなってから

二ヶ月が過ぎた頃。

 

母親は思い切って、

 

娘の南原さんを外に連れ出そうと、

声をかけてみた。

 

「ご飯はもう全部食べれるがやろ?

そろそろ外にでも出てみんけ?」

 

すると南原さんは、

怪訝そうな顔をして言ったんだ。

 

「私いつもご飯残しとるよ?」

 

(終)

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