膝の上に乗っているはずの飼い猫が
去年の冬の話です。
当時は母親と二人暮らしで、
黒猫を一匹飼っていました。
この黒猫はとても私に懐いており、
コタツに入ってパソコンをしていると、
いつも膝の上に乗って来てはゴロゴロする、
とても可愛い猫でした。
その日も夜遅くまで
パソコンで暇潰しをしていると、
いつものように猫がやって来たようでした。
気絶しそうなほどの何かに遭遇する・・・
パソコンに夢中でしたから、
気配は感じるものの、
その姿を確認することもなく、
画面から目を離しませんでした。
私の背後で何やらゴソゴソと
しているようでしたが、
そのうち私の腰に擦り寄るように、
徐々に膝の上へと移動してきました。
(また来たか・・・重いなあ・・・)
など、多少疎ましく思いましたが、
やはり可愛い飼い猫ですから、
重いのを我慢してそのまま膝の上に
居させてやることにしました。
パソコンをしていない時は
撫でてやったりするものですが、
依然として私はパソコンに夢中で、
目は画面に釘付け。
当然ながら、
両手はキーボードとマウスを操作しています。
そして、しばらくした頃・・・
「ニャーオ」
離れた場所から猫の声がします。
(え!?)
私は声の方に振り向くと、
部屋の隅に黒猫が座っていました。
しかし、まだ私の膝の上には、
何かが存在している感覚があります。
黒猫以外の何かが・・・?!
ここで初めて、
自分の膝の上の”何か”を目視しました。
それは、
生温かい『男の頭』でした。
真っ黒な髪の毛に覆われ、
目を大きく開いてこちらを見ていました。
首から下は何もない頭だけが・・・
(終)