一面の灰色の幽霊屋敷の中で見たもの
これは少し怖くもあり、また奇妙で不思議な体験をした話です。
私が子供の頃、近所にいわゆる『幽霊屋敷』がありました。
だからといって幽霊を見た人はいなかったと思うのですが、その屋敷は朽ち果てていて、ボロボロの木造家屋でした。
ある日の学校帰り、私はちょっとした出来心で忍び込んでみました。
一人で・・・。
中は何と表現すればよいのか、一面の灰色で白黒写真の世界でした。
家具や畳などは一切なく、雨ざらしになって色褪せた木材が剥き出しになっていました。
つまんないなぁと思いながら二階に上がり、寝室らしき部屋の襖を開けると、極彩色の物が目に飛び込んできたのです。
それは、床一面に散らばった、色とりどりの『風車(かざぐるま)』でした。
灰色一色の朽ち果てた世界の中で、その風車は妙に真新しく、毒々しい色をしていました。
しばらく私は金縛りにでもあったように風車を見つめていましたが、風が吹いて風車が回りだすと、なんだか怖くなって一目散に屋敷から逃げ出しました。
それ以降、私はその屋敷に近寄ることはありませんでした。
ただ、通学路にその風車が落ちているのをよく見かけるようになりました。
きっと他にもあの屋敷に入った子がいて風車をばら撒いていたのでしょうが、私は決して触りませんでした。
そんなことから12年後、久しぶりに屋敷のあった場所へ行ってみると、そこには真新しい極彩色の建物が建っていました。
『軽食・喫茶 風車』
ネタみたいですが、実話です。
(終)