小さな好奇心が招いた僕の命の終わり 2/2

踏切

前回までの話はこちら

よく注文を間違えていたし、

皿を下げる時もやたらとせかせかと急いでおり、

 

そのせいで皿を一枚落としてしまいました。

 

それを見て、”落ち着きがない子だな~”

程度に思っていましたが、

 

僕の皿を下げる時に目が合うと、

「ひっ!」と小さく声をあげたのです。

 

僕はとても嫌な感じがしましたが、

どうすることも出来ません。

 

結局、深夜1時には解散することになり、

みんなそれぞれ帰り支度を始めました。

 

そこで僕も渋々ながら

自転車の鍵を開けていると、

 

「お前、今日何した?」

 

と友人が近付いて来て、

そう尋ねてきました。

 

僕はまだ誰にも今朝の話を

出来ないでいました。

 

その質問に不安になり、

 

友人に何故そんなことを訊くのか、

と逆に問いただすと、

 

僕の足元に何かが纏わり憑いているのが

見えていたそうです。

 

ただ、彼にはそれが何であるのかは分からず、

また凄く嫌な感じもするらしく、

 

どうしても気になるので訊いてみたそうです。

 

霊感があるとかそういう類の話に

全く興味のない人だったので、

 

僕は少々驚きながらも、

 

だからこそ信用出来ると思い、

とりあえず事情を説明することにしました。

 

話を聞き終わった彼は、

 

「とりあえずうちに来い!」

 

と言いました。

 

他になす術のない僕は彼の言葉に従い、

付いて行くことにしました。

 

そして、彼の家に向かう道中で

彼に聞いた話によると、

 

彼の家は一家揃って霊感が強く、

特に妹は特別で、

 

その道にスカウトされたことも

あるらしいのです。

 

まだ実害もなく、

そんなに深刻に思っていなかった僕は、

 

そんな大層な人に見てもらわなくても・・・

と思いましたが、

 

せっかくなので祓ってもらえるのなら

祓ってもらおうと思い、

 

その妹さんと会ってみることにしました。

 

しかし、

家に着くと彼の父親が玄関に立っており、

 

「すまんが帰ってくれ」

 

と言うのです。

 

僕は訳が分からず、

友人に助けを求めてみましたが、

 

その友人も困惑していました。

 

「せめて事情を聞くだけでも」

 

と掛け合ってもくれましたが、

 

「ダメだ、帰ってくれ!」

 

と冷たく言い放たれ、

仕方なく僕は帰路につきました。

 

付いて来いと言われたのに、

 

玄関にも上げてもらえず

邪険に追い払われた僕は、

 

非常に腹が立っていました。

 

家に帰ってすぐさま先ほどの彼に電話すると、

なかなか出てくれません。

 

1分ほどコールした後に

ようやく電話口に出た彼は、

 

ただ謝るばかり・・・

 

何も話してはくれません。

 

それでもしつこく訊いていると、

 

彼は「父親に絶対に教えるな」と言われた、

とだけ話してくれました。

 

しかし、

そう言われると余計に気になるものです。

 

ただ、もうその夜に出来ることは無かった為、

僕は床に就くことにしました。

 

その夜は怒りのせいか、疲れのせいか、

恐怖心は無くすぐに眠ることが出来ました。

 

夢を見ました。

 

鼻を突くツンとした臭いが漂っています。

 

遠くに踏切があって、

あの音が鳴っています。

 

僕はそれを見つめるだけで、

全く動くことは出来ません。

 

次の日も同じ夢を見ました。

 

状況はまったく同じです。

 

ただ、少しだけ踏切に近付いています。

 

毎日同じ夢を見ます。

 

段々と踏切に近付いていきます。

 

それから数日後、

友人から無理矢理に話を訊きだしたところ、

 

「僕と自殺した男は一つになっている」

 

ということでした。

 

男は死ぬ直前に僕と目が合った時、

 

花束を置いたのが僕で、

それも意図的であると直感し、

 

心から憎んだそうです。

 

そして同時に、

 

罪悪感を抱いた僕の感情と

彼の感情がリンクして、

 

僕に取り憑いた。

 

いや、むしろ混じったらしく、

 

これは並大抵の力ではどうすることも出来ず、

中途半端な力では飲み込まれてしまうそうです。

 

結局、僕は話を聞けたものの、

どうすることも出来ず、

 

今夜も眠らないように過ごしています。

 

原因は、誰でも持っているような

小さな好奇心でした。

 

ただ、人の命が関わる時には、

その好奇心は眠らせた方が良いと思います。

 

・・・でないと、

 

僕と同じような目に遭うことになってしまう

かも知れないのですから。

 

(終)

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