路上教習が嫌で嫌でたまらない
俺は今、東京郊外の自動車教習所に通っているのだが、路上教習が嫌で嫌でたまらない。
別に助手席に座る教習所の指導員にイヤな奴がいるとか、交差点の右折で対向車にビビるとか、そういった事ではない。
路上教習で使う道路は教習所の西側コースと東側コースの二通りあるのだが、問題は西側コースだ。
最初にそこを通った時は、本当に泣きそうになった。
なぜなら、わりと大きめの街道が交わる交差点の真ん中に、不自然に大きな顔の女の人がフラフラしながら立っているからだ。
でも街道を走っている車は、躊躇なくその女の人めがけて突っ込んでいく。
普通自動車も、トラックも、大きなダンプもだ。
どの車も女の人を通り抜けて普通に走り去っていくのだ。
路上教習では、こちらの信号が青になると交差点を直進する。
本音を言えば、ブレーキを踏んで止まりたい。
俺は、他にこの女の人に気付いている車はいないのか?と、周囲を見渡しながら車を進める。
そして、泣きそうな心持ちで、そのフラフラと動く女の人の身体を通り抜ける。
本当に気持ちが悪い・・・。
「ここの交差点は事故が多いから今みたいにしっかり安全確認をしてね」
そこで指導員がそう言った。
そりゃ当然だ。
あんなのところに変なのが立っていれば事故も起こるさ。
そして、明日もそのコースを走るんだ・・・。
今から憂鬱だよ。
(終)