初めての金縛りに興奮した私は
生まれて28年、金縛りを初めて体験した夜のこと。
ちなみに、私は霊感が全く無い。
2週間ほど前、それは突然やって来た。
夜中にふと目が覚めると体が動かない!
寝ぼけているのかと思ったが、どうやら違うらしい。
この時点で私のテンションがMAXに上がる。
なぜなら、こんなおいしい体験を待ち侘びていたからだ。
一生に一度のチャンス!?
体を動かそうとしても殆ど動かず(力一杯頑張れば少しは動くのだが、体がベッドに張り付いた感覚)、胸も苦しい。
いくら声を出そうにも、「ぅ・・ぁ・・・」の様なうめき声しかあげられない。
3分ほど金縛りあるあるを楽しんでいたところで、一番大事なことに気付く。
そう、まだ『霊』というものを見ていない。
この状態は一生に一度のチャンスかもしれない。
私は目だけを動かし、枕元をチェックする。
そこには寝る前に置いた目覚まし時計があるだけだ。
おかしい・・・。
着物姿の正座をしたババアがいない。
そうか、足下から這い上がって来るパターンか?
視線を下に向ける。
胸は苦しいままだが、何者も私を攻略しに来ない・・・。
「もしや!?」と思い、正統派でドアからこんにちはのパターンも検証したがダメだ。
時間にして10分程度だったろうか。
いい加減しんどくなってきた。
私は声にならない大声を出しながら、力一杯に全身を起こす。
すると、初めての金縛りは一瞬で解けた。
リビングに行ってビールを飲み、再び就寝する。
そして翌朝、洗面所の鏡に映った自分の顔を見て驚愕した。
右頬に3箇所の黒いアザがあった。
さらに、左頬と喉には無数の引っ掻き傷も。
一体、昨夜は何が起きていたのか?
何も分からないことが怖い・・・。
(終)