その人がはっきりと見える位置に来た時
夜23時に仕事が終わり、車で帰っていた途中のこと。
自宅の少し手前にある直線道路に差し掛かった時、いつも点いてる街灯が何故か全部消えていた。
そこでまず気味が悪くなり、車のライトをハイビームにした。
すると、道路の左側に“何か”があるのが見えた。
元々そこには祠のようなものが建っていて、毎日そこを通っているから見慣れているのだが、その日はその祠の横に何かがあった。
だんだん近付くにつれて、それがどうやら人だということが分かった。
それで、「なんだぁ~人か~」と私は少しホッとした。
・・・が、いよいよその人がはっきりと見える位置に来た時、背筋がゾゾゾッとなった。
その人はピクリとも動かない。
道路に背中を向けた状態で、両腕が脱臼したかのようにブラーンと下に垂れ、頭もガクッと垂れて前のめりに。
それに、顔がまったく見えない。
髪が長くて頭を垂れているからか、髪が顔全体を隠してしまっている。
その横を通り過ぎた後、バックミラーで3回確認して、そして4回目を見ようとすると消えていた街灯が全部点いた。
再度確認すると、そこには誰も居なかった。
それからは、その道を夜は通らないことにしている。
しばらくは思い出してなかなか寝れなかったが、こっちに振り向かれなくて本当に良かったと思っている。
(終)