夢の中に現れた白い蛇の注文とは
俺の故郷には、山に湖があるにも関わらず、何故か淡水ではない珍しい湖がある。
これは、そんな田舎に住む伯母さんの話。
ある日のこと、伯母さんは寝ていると夢を見た。
夢の中には白い蛇が現れ、「私が住んでいるところを直して欲しい」と言ったんだそうだ。
目が覚めた伯母さんは、『白い蛇』というありがちな話なものだからと冷静に考え、大きめな地震がある度に津波がきて、最近も床下浸水したからそんな夢を見たんだろう、と流していた。
湖の主だ
それから数日が経ち、また寝ていると、今度は「ここだ」と、その白い蛇に具体的な映像を見せられたそうだ。
その映像が、最初に書いた湖の中にあるらしい、見たことのない石造りの祠。
伯母さんは夢の中で白い蛇に聞いてみた。
「あなたは誰ですか?」と。
すると、その白い蛇は「湖の主だ」と言ったらしい。
朝起きた伯母さんは伯父さんにその夢の話をしたところ、伯父さんは「主だなんて言う主がいるのか?(笑)」なんて笑ったものだから、伯母さんはムキになって食って掛かった。
「湖の中に石の祠があるんだから、あんたもそれを見れば少しは信じるだろうよ!」と。
しかし、伯父さんはその土地に40年も住んでいるが、祠があるなんて知らない。
どうせ夢だろうと言ったが、あまりに伯母さんがしつこいので、伯父さんは持っている手漕ぎボートを車に乗せて湖に向かった。
湖に着いてから伯母さんが夢で見た場所を探していると、確かにその場所はあった。
「ここ!ここ!」
伯父さんは伯母さんが指差す崖縁の下までボートを漕いで、縁にボートを着けて水中を覗いてみた。
しかし、何かはあるようだが、祠かどうかがはっきり分からないので伯父さんは潜ってみたそうだ。
そうしたら、あった。
石の祠が。
伯父さんもパニックになり、「新しい祠を作らなきゃ!」という事になったが、役場へ相談に行っても妄想や戯言の扱い。
仕方なく一緒に役場の人間も連れて行って確かめさせた挙句、役場の人間も驚いたらしいが、どう申し立てをしたら良いかの相談から始まった。
それにイライラした伯母さん達は、「もういい!自分達で作るから!」という話になった。
そして業者に頼んで祠を見てもらうと、「新しいものを作るよりは、これを綺麗にした方が手っ取り早い」と言ったので、伯母さん達は業者に任せた。
その後、祠がきちんと綺麗になってからは白い蛇は夢に出て来ず、水害もゼロではないが減ったという。
(終)