お化けが出るという噂の朽ちた建物へ

饅頭

 

もう20年以上前の話になる。

 

実家の近くの山に、寺なんだか神社なんだか覚えていないが朽ちた建物があった。

 

地元の人間も存在を忘れかけているぐらい古い建物というか残骸で、そこに『お化けが出る』という噂が子供たちの間で流行った。

 

そして、そこに友達と二人で「冒険しに行こう」という話になったのだが、怖いので昼間に行くことになった。

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それはさっき俺が・・・

そこへ行くのは比較的容易で、獣道を辿っていけば子供の自転車でも小一時間ぐらいで着いた。

 

まだ陽もあり、その建物の周りは比較的拓(ひら)けているからそこまで怖くなくて、さっそく建物の中に入ってみた。

 

入ってみたと言っても、もう扉は朽ちて倒れているし屋根も穴だらけで、不気味ではあるが怖くはない。

 

調子に乗った俺と友達は、色々ひっくり返して面白いものでもないかなと漁った結果、壁に掛けてあるおたふくの仮面に目がいった。

 

でもこれがヒビ割れが酷く、ブツブツになっていて気持ち悪い。

 

あまりの気持ち悪さに友達が棒で叩いて落とした上に、そこら辺に落ちていた板で見えないようにして帰った。

 

ただ、さすがにあれだけ荒らして帰ったのが気になり、友達と別れた後にまんじゅうを持って一人でもう一度建物に行った。

 

散らかしたものを一通り片付け、気持ち悪いおたふくの仮面も元に戻して、入り口のところにあった台にまんじゅうを置いて帰った

 

その帰り道、近所では見たことのないスラっと背の高い綺麗なお姉さんが歩いていて、駅までの道を聞かれた。

 

とても細かいレースが入っている真っ白なワンピース姿で、お姉さんの肌も負けないぐらい真っ白で、なんというのか「もうこの世のものではない」感じがした。

 

でも俺はアホなガキだったので、すごく綺麗なお姉さんに話しかけられて「やったー」ぐらいにしか思わず、普通に駅までの道順を教えてあげた。

 

そしたら、「お礼に」と言ってまんじゅうを貰った。

 

それはさっき俺があの建物に置いてきたのと同じまんじゅう・・・。

 

急に怖くなり、全速力で家に帰って布団に包まって震えていた。

 

ただの偶然かも知れないと思ったが、次の日に一緒に行った友達が『狐憑き』になったと聞かされた。

 

※狐憑き(きつねつき)

きつねの霊に取りつかれた結果起こるとされる、精神が乱れた状態。その取りつかれた人。

 

友達は病院に担ぎ込まれたが、その日のうちに元に戻ってすぐに退院した。

 

が、その時のことは何も覚えていないらしい。

 

「次は俺か?」と思ってますます怖くなって怯えたが、その後は特に何もなかった。

 

形だけとはいえ、片付けに戻ったのが良かったと思うが、今でも時々怖くなる。

 

(終)

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