今でも僕の宝物
ふとしたキッカケで、昔読んだ、
ある小説を再読したくなったんです。
本棚を探しましたが、当時、
読んだ本はすぐ売っていたせいか
見当たりませんでした。
無いとなると、
ますます読みたくなるもの。
そこで早速、地元の古本屋へ。
わりと有名な作家の小説なので
すぐに見つかり、
帰宅して読み始めました。
内容とオーバーラップして甦ってくる
当時の思い出に浸りながら読み進めると、
驚くべき事実に遭遇しました。
途中のページに鉛筆で書かれた、
8/15 PM6:00という文字。
これは僕が書いた文字であり、
この本は以前に僕が売ったもの
だったのです。
それは当時、付き合っていた彼女との、
デートの待ち合わせ日時の走り書きでした。
売ったのも買ったのも、同じ古本屋。
珍しい話ですが、
有り得ない話ではありません。
驚いた理由は別にあったのです。
今から6年前に彼女は交通事故で
亡くなったのですが、
その彼女の命日が、
8/15だったのです。
このデートは彼女が亡くなる
ちょうど1年前。
この奇妙な巡り合わせには、
本当に驚きました。
今でも、この古ぼけた文庫本は、
僕の宝物です。
(終)