お寺の本堂で眠り込んでいたら
これは、私が小学2年生の時に体験した不思議な話です。
ある日のこと、父が友人の家へ遊びに行って来ると言うので、私は一緒に付いて行きました。
父のその友人というのは、お寺の住職さんでした。
お寺に着き、父たちが話しているあいだ退屈になった私は、人気のない本堂に入り込みました。
天井から綺麗なキラキラした傘のような飾りが吊るしてあって、私はその飾りを見ていたのですが、いつの間にか眠り込んでいたらしいのです。
夢うつつに何かに引っ張られるのを感じましたが、眠気に負けてそのまま眠っていました。
しばらくして、私は父の笑い声で起きました。
私が居なくなったので皆と一緒に探していたら、本堂で寝ていたので呆れたそうです。
しかし、起きた私はすぐに、眠り込んだ時とは“違う場所”にいることに気がつきました。
なぜか本堂の端の方にいたのです。
私はその場に居た皆に「綺麗な飾りの下にいたのに・・・」と言ったところ、父と一緒に笑っていた住職さんが急に真剣な顔になり、こう言いました。
「あの飾りの下はね、お坊さんの場所なんだから、もう入り込んだらダメだよ。知らずにいたら、仏さんがやって来て、どかされるからね」
もしかして仏さんは、「ああ、もうこの子ったら、こんなとこで寝おってからに」と、そんな感じに愚痴りながら、私を端っこの方に引きずっていったのでしょうか。
きっと幼い私を慈愛溢れる目で見てくれていたのですね。
(終)