これはドッペルゲンガーの仕業なのか?
自宅から2キロほど離れたところの病院へ、
祖母を迎えに行った時の話。
祖母は最近足腰が弱ってきたので、
痛み止めのための注射を、
掛かりつけの病院へ行って
打ってもらっている。
私はその日、
祖母を病院へ送ってから
買い物へ行った。
10時30分に予約してあって、
帰りは12時くらいになるかも知れない
と言っていたから、
十分に余裕を持って買い物ができる。
本屋で雑誌を立ち読みしたり、
薬局で薬やサプリメントを買って店を出ると、
11時40分を過ぎていた。
お昼ご飯にたこ焼きでも買っていけば、
ちょうどいい時間に病院に着けそうだ。
私はデパート内のたこ焼き屋で
醤油たこ焼きを買い、
そのまま祖母の迎えに行った。
病院の駐車場に着いたのは、
12時05分くらいだった。
祖母は、院内の玄関口のベンチに
いつも座っているので、
そこへ行く。
しかし、祖母は居なかった。
もしかして時間かかってるのかな?
と思いながら受付で、
「すみません。
○○の身内の者なんですが、
祖母はまだ診察中ですかね?」
と聞くと、
「えっ、○○さんなら、
もうお帰りになりましたよ」
と返ってきた。
ぎょっとして聞き返すと、
11時50分頃に精算して
玄関から出たそうだ。
私が祖母を見ていないと言うと
受付の人も驚いて、
すぐに玄関から外へ見に行った。
祖母は足腰が弱っているから
長距離を歩くのはかなりキツいため、
徒歩で2キロもある道を行くなんて
絶対にあり得ない。
私はとりあえず自宅にいる弟に、
電話を入れることにした。
プルルルルル・・・
プルルルルル・・・
プルルルルル・・・
プルルルルル・・・
4コールの後に出た。
相手は祖母だった。
「はい、○○ですが」
「ばぁちゃん!?」
「おぉ、ユイちゃんか。
どうかしたんか?」
どうしたは、こっちの台詞だ。
受付の人に、
自宅に祖母が居た旨を伝えて
病院を出る。
その間に祖母は話してくれた。
「ユイちゃんが迎えに来てくれたんやないか。
家まで来てばあちゃん降ろしてくれた後は、
買い物行くから言うて出かけたん違うか?」
いやいやいや、
私は当然身に覚えはなかったが、
祖母は間違いなく私の運転で
自宅に帰ったらしい。
痴呆の気はあまりなかったのに、
とうとうボケたのかと思ったけど、
祖母が嘘を言うようにも思えない。
まさか私のドッペルさんが、
祖母を迎えに行ったのだろうか。
※ドッペルゲンガー
日本では、自分とそっくりの姿をした分身のことを意味する。 ドイツ語本来の意味では、ドッペルゲンガーは生霊であり、実際の人間の生き写しが現れる超常現象のことを言う。
ともあれ、
事故とかなくて本当に良かった。
あれ以来、
もう私のドッペルさんは現れなかったが、
今もこの出来事は家族や親族の間で
度々話題になっている。
・・・というか、
迎え行ったなら私に連絡くれれば
二度手間にならずに済んだのに、
と今でも思う。
(終)