姉の部屋にお泊りに行った深夜の出来事
私の姉の話です。
今は普通になったけれど、
十代後半から二十代後半ぐらいまで、
霊感らしきものがありました。
本人は嫌な感じが分かるとか、
心霊体験したとかよく言っていて、
私はいつも嘘くさいと思っていました。
霊感のある姉だけに見えていたもの・・・
これは、ある夏休みのことです。
一人暮らしをしている姉の家へ、
お泊りに行きました。
かなり夜更かしをしてそろそろ寝ようとなり、
布団を並べて一緒に就寝しました。
姉の部屋はマンションの2階で、
ベランダ側に姉の布団、
すぐ隣に私でした。
私はなかなか眠れなかったのですが、
姉はすぐに寝息を立てていました。
すでに外も明るくなり始めていました。
どうしても眠れなかった私は、
姉を起こすと怖いので、
横になったまま薄暗い中で
こっそりと漫画を読み始めました。
しばらくすると姉が唸り声をあげ、
ガバッと起き上がりました。
(お前のせいで目が覚めた!)と、
怒られると思ってビクッとしたのですが・・・
次の瞬間、姉は凄い剣幕で、
「あんた今、私の顔、
覗かなかったよね?」・・・と。
もちろん私は否定しました。
すると姉は、
「じゃあ、ベランダから
誰か入って来てないよね?」
と言います。
全く意味不明のことで怖いので、
詳しく訊いてみると、
「さっきベランダ側から
髪の長い女が顔を覗いていた。
その女は胸から上だけだった。
なんで○○(私)は変な人が来てるのに
助けてくれなかったの?
その人は数秒覗き込むと、
ビデオの巻き戻しみたいにキュルキュルと
ベランダに戻ってまた覗き込んで・・・
何回も!何回も!
戻る時は超早いし!」
と早口で言いました。
私は姉の普通じゃない雰囲気に怖くなり、
そんな人は居ないし、
私も覗いていないし、
カーテンすら揺れていないと、
夢でも見たんだと説得しました。
(でも、だって・・・)
と否定されると思ったのですが、
姉はすぐ納得し、
「そうだよね。
もしオバケが来たとしても、
○○が居るから安心だよね!」
と、すぐに寝直しました。
いきなり怖い話をされて怖くなった私も、
無理矢理でも寝ることにしました。
もうすでに外は大分明るくなっています。
安物のカーテンでは日の光は遮れません。
眩しいなあとベランダ側を見ると、
カーテンが揺れていました。
『なぜカーテンが揺れているのか?』
・・・考えると怖いので、
姉だなと自分に言い聞かせ、
反対側を向いてずっと目を閉じたまま
昼を迎えました。
(終)