あっちの世界へ導かれていたのか?
かなり昔の話になるが、怖くて不思議な体験をしたことがある。
一時期『ハチ族』といって、自転車やバイクで日本中を旅するのが流行った時があった。
楽しそうだったので私もやってみようと思い、一人でぶらりと自転車で旅に出掛けた。
出発してから2日目の事、近くにキャンプ場を探したが見つからなかった。
そこらで野宿になるかなと思ったが、当時は公民館を解放している地域もあったので、地元の人らしきおじさんに「ここら辺に泊まれる所はないですか?」と訊いてみた。
すると、「こっちにありますよ」と言われたので後を付いて行った。
それ以上は行くな!
おじさんは徒歩だったこともあり、私も自転車を押して歩いていた。
どうやら山の方に向かっているようだった。
キャンプ場というのは山にある事が多いので、私は疑いもせず信用して後を付いていった。
進むにつれて街灯も少なくなり、やがて真っ暗に。
途中で「おかしいな・・・」と思い始めたが、気にせず付いて行った。
私は、おじさんの10メートルほど後ろを付いて歩いていた。
何故なら、もしこの人が”悪人”だったら困るからだ。
すると、おじさんは急に立ち止まり、私の方へと振り返った。
「早く来いよ!」
そんな事を言いたげな感じがしたので、足早におじさんの方へ近付こうとした。
すると突然、私は『何者かに』後ろから腕を引っ張られた。
まるで、「それ以上は行くな!」と抑止しているかのように。
私はビックリして、すぐに振り返って後ろを見たが、誰も居ない。
「えっ!?」と思って前を見ると、先を歩いていたはずのおじさんも居ない。
その時、何が起きているのか全く理解できなかった。
そして、落ち着いた頃に周辺を見渡すと、そこは沼だった。
それも、かなり大きな沼。
10メートルほど前を歩いていたおじさんは、ちょうど沼の中央で立ち止まった事になる。
一体なんだったんだろうか?
もしかすると、私は『あの世』へ導かれていたのだろうか?
この出来事の真相が今でもよく分からない。
(終)