バス停で佇んでいる女の子
朝の出勤時に高校の横を通るのだが、校舎周りの塀側にある学校向けのバス停に、いつも一人の女の子が佇んでいる。
通りすがりに見かけるだけで特に気に留めては無かったが、ある日おかしな事に気付いた。
その女の子が一人きりでバス停にいる時はバスが止まらない。
気になって見るようにしたら、一度や二度じゃない。
そういう状況を何度も見かけた。
彼女は、いつも空を見上げてバス停で佇んでいる。
俺は通りすがりでしかないので、ただ見かけているだけだ。
人間不思議なもので、気になってくると興味が出てくる。
なるべくその女の子を見られるように、少し早めに出勤したりしてみた。
単なる好奇心であって、下心ではない・・・つもりだ。
数日間、数週間と見ているうち、さらに気付いた。
バス停にいる女の子は服装が変わらない。
いつも空を見上げている。
そしてバスが止まらない。
これらが全く変わらないのだ。
他の待ち合い人が居てバスが止まると、彼女もつられるようにバスに乗る。
乗ると言ったが、これは滅多に見れなかった。
そんな観察を何ヵ月か繰り返した。
そんなある日の事、いつも通りにバス停を通りかかると、女の子の後ろに変な爺さんがいた。
俺はいつもの待ち合いだなと思いながら通りすがった。
ふと爺さんが変な動きをしたなと思った次の瞬間、女の子が折り畳まれるように爺さんに吸い込まれてしまった。
あまりにも訳の分からない様子で、「えっ?!」と声を出してしまった。
すると爺さんは、さっと足早にその場を去って行ってしまった。
俺はぽかーんとしたまま立ち竦んでしまって、その日は遅刻した。
それ以降、バス停に女の子は現れなくなってしまった。
あれは一体何だったんだろう、と今も思う。
(終)