夜の峠での不思議な体験談
これは、去年実際にあった話。
その日、ほぼ徹夜に近い仕事が3日ほど続いており、夜に中央道で仕事先の岐阜から埼玉まで帰る道中のことだった。
小仏トンネルが事故による通行止めで、相模湖ICで降ろされた。
その後、20号の渋滞を嫌ったのと、若い頃に走り屋をしていたので妙に夜の峠を走りたくなり、上野原で降りて陣間街道の和田峠を目指すことにした。
夜な夜な峠の頂き辺りで缶コーヒーでも飲んで、峠をかっ飛ばして八王子西から圏央道に乗ろうという目論見だった。
本当に神様っているんだなあ
だが、道中に徹夜の蓄積か、どうにも眠気を抑えられず、神社付近で車を停めて仮眠をとることにした。
23時頃であっただろうか。
5月半ばで車で寝るにはちょうど良い気候であるにもかかわらず、寒くてすぐに目が覚めた。
数十分は寝た感覚だったが、車の時計を見ると既に1時30分。
「ヤバい」と焦り、次の日もやることが沢山あったので、急いで峠を抜けることに。
しかし、結構なスピードで峠を上るが一向に上りきる気配もなく、ジュースの自販機やちょっとした駐車場もないので不安になりながらも走り続けた。
そのうち、走っても走っても同じ峠を繰り返しているような気がして、一旦車を停めて、閉じていたカーナビを開いてみた。
すると、何故か仮眠していた『神社の前』辺りを指している。
GPSの異常だろうと思い、ナビを見ながらさらに車を進めた。
だが、一向にナビが反応しない。
完全に壊れたと判断し、ナビをあてにすることをやめた。
さらに走り続けるとようやく景色が変わってきて、トンネルに差し掛かった。
トンネルに入ると、今まで対向車と全くすれ違っていなかったのに、数十台の車やトラックとすれ違う。
だが、何故かすれ違う車が全てレトロカーばかり。
トンネルを抜けると、やっと駐車が出来るちょっとしたパーキングスペースを見つけて停めた。
車から降り、うっすら空が明るくなったのが分かったが、同時に濃霧が立ち込めた。
自販機もようやく見つかり、待望の缶コーヒーを買った。
コーヒーを飲んでいると、もう一台車が入って来たのが分かった。
マフラーの音が何故か、大太鼓を一定のリズムで刻むような音がしていた。
すると、中から若い男女が降りてきて、何かはしゃいでいる。
こちらには気づいてないようだ。
何を騒いでいるかは分からないが、最後に男女揃って「おめでとう!」と叫んでいた。
結婚したばかりなのだろう、若くて良いことだと思いつつ、若者の車の方に目を向けると、もうその車はなかった。
その現象に不思議と怖さはなかったものの、煙草を吸って自分の車に戻り、小休憩をとった。
そこでまた、私は寝てしまったようだ・・・。
気が付いて目が覚めると、濃霧も晴れて空はきれいな五月晴れで清々しい朝に。
しかし、そこはまだ昨夜に停めていたはずの神社前。
「なんだ、夢だったか・・・」と峠を進み、八王子西ICを目指した。
だが、車のドリンクホルダーに目をやってドキッとした。
夢の中であるはずの缶コーヒーの空き缶が刺さっていたからだ。
そんな不思議な体験の2週間後、7年間も不妊で悩んでいた我が家に待望のご懐妊のニュースが。
今年の1月に元気な男の子が生まれた。
あの神社の神様の知らせなのかは分からないが、「本当に神様っているんだなあ」と確信した出来事だった。
今思えば、あの時の男女は私が幼少の時に事故で他界した両親だったのかもしれない。
本当にありがとう!
(終)
「夜な夜な」
→毎晩。毎夜。
もげろ