峠越えの手前で起きた不思議な怪奇現象
これは、私が大学生の時の体験話。
彼女のいない学生寮の男4人で、休みの前日などの深夜によくドライブをしていた。
それは夏休み前の暑い日、いつものようにアテもなく出発した。
友人の車は中古車でエアコンの効きが悪かった為、ずっと窓を開けていた。
アテもないので、普段通らないような道を進む。
山道に入り、周りに人家もなくなった頃、迷惑にならないと考えてカーステレオのボリュームを上げた。
しばらくして峠に差し掛かり、そしてもう少しで峠越えをするという所で突然、カーステレオの音声が途切れた。
いくら中古車とはいえ、カーステレオ自体は新品だったので少し不思議に思ったが、峠を下る頃に元に戻ったのであまり気にせず、そのままドライブを続けた。
特に目的もないドライブなので、夜景を眺めたりした後に、帰って麻雀をすることにした。
私たちは何も考えず、行きに不思議な現象の起こった峠のある道を走っていた。
峠に向かったところ、またもやカーステレオが鳴らなくなった。
そこで、何かあるのか確かめようということになり、峠に車を止めて下車した。
男4人ということもあり、その時はさほど怖くなかった。
虫の声も何も聞こえず、辺りには静寂が広がっていた。
音のない世界というものは不気味なもので、自然と4人全員が黙ってしまった。
月明かりと車のライトで辺りは見渡せたが、道の両脇は草が生い茂っており、特に何かがあるようには思えなかった。
すると突然、車を運転していた友人が「今、誰か喋ったか?」と、怯えたように私たちを見回した。
しかし、誰も喋っていない。
よく冗談を言う奴だったので、「脅かすなよ~」と私を含めた3人が彼に言った。
すると、『タチサレ』という声が頭の中に響いた。
私たち4人同時に響いたのか、次の瞬間、示し合わせたように車に乗り、無言のうちに峠を後にした。
結局、その日は麻雀などする余裕はなかった。
それ以降、その峠を通ることはなく、話題にすることもなかったのだが、卒業前にもう一度行ってみることにした。
2月の終わり頃、夜は怖いので昼間に出発した。
カーステレオを鳴らすことはなく峠に着くと、夏の間は草で見えなかったのか、“小さな立て札”を見つけた。
その立て札には、青い文字で以下のように書かれてあり、傍には何かを祀っているのか大きな石が置いてあった。
– – – – – – – – – – – –
ここには、
×××がねむっています。
××かにしてください。
– – – – – – – – – – – –
(×箇所は読み取れず)
私たちは”何か”を怒らせてしまったのだと感じて、全員で謝った。
結局、それが何だったのかは分からなかったが。
(終)