私を迎えに来てくれた兄は誰?
これは、まだ私が幼かった時の不思議な体験談です。
当時、習っていたピアノからの帰りに、一度だけ兄が迎えに来たことがありました。
レッスンが終わるのは夜の7時だったので、それほど遅くはないですし、その時は夏だったので外はまだ明るかったです。
道のりも、子供の足で10分程度は歩きますが、小2から通っているので慣れた道です。
兄の服装
いつも通りに先生の家を出て歩き始めたら、向こうから兄が自転車で来るのが見え、そのまま兄の自転車の後ろに乗って帰りました。
荷台に座るためのクッションを持って来てくれたので、私を迎えに来てくれたのは間違いないと思います。
兄は「ちょっと回り道するぞ」と言って、帰り道は随分と遠回りをしました。
途中、遠くで救急車のサイレンの音が聞こえました。
いつもの帰り道でトラックが民家に突っ込んだのは翌日に知りましたが、不思議なのはそのことではありません。
帰宅後、兄より先に家に入った私は、母に「お兄ちゃんが迎えに来てくれた」と言うと、母は変な顔をしました。
すぐに母と一緒に兄の部屋に行くと、いつの間にか兄はもう部屋に居ました。
そして母は兄に「いつの間に出て行ったの?」と聞いていましたが、兄は笑いながら「お母さんが気づかなかっただけ」というような返事でした。
でも、私は気づいたのです。
さっき迎えに来てくれた時と”兄の服装が違う”のです。
母に聞いてみると、兄はずっとその服装だったとのこと。
そうならば、さっきまで私が自転車の後ろで掴っていた兄は、今部屋に居る兄とは『別の人』なのでしょうか?
(終)