壁越しに聞こえる声と聞こえない足音
やっと声がしなくなった・・・。
これは、ついさっき起こった話だ。
俺はベッドに横になって本を読んでいた。
すると、なんだか外から子供の声する。
小学生くらいの甲高い声で、「アハハ、アハハ」と。
「なんだよ!うっせーなー」と思って時計を見ると、もう日付は変わっている。
普通に考えれば、子供が外で遊んでいるわけがない。
俺が硬直している間も、壁一枚隔てた向こうで子供の楽しそうな声がしているのだ。
有り得ないことが起こる
3~5人くらいの子供が走り回っては、時々窓の下辺りで立ち止まり、「ハハ、アハハ」、「ハハハ」、「やっちゃう?やっちゃう?」、「ハハハハ」と繰り返している。
俺は必死で落ち着こうとして、「きっと何処かのバカ親たちが、深夜にガキを外に出して遊ばせているに違いない。非常識な!」と思い込もうとしていたところ、「○○○○!」と俺のフルネームを叫んだのだ。
こんなことは有り得ない・・・。
俺は親元を離れて一人暮らしで、ここには知り合いもいないし、そもそも表札すら出していない。
その辺のガキが、俺の名前なんて知っているはずがないのだ。
そうして声も出せずにじっとしていると、余計なことに気が付いてしまった。
外ではさっきからあっちこっち移動しているのに、足音が全然していない。
声どころか、「ハァーハァー」という息遣いまで聞こえているにも関わらず、足音だけが全然していないのだ。
俺は「もう勘弁してくれ・・・」という気持ちで必死に息を殺して、声がしなくなるまでずっと耐えていた。
今はもう何も聞こえないし、何かが動いている気配もない。
得体の知れないモノに名前を呼ばれることは、気持ち悪いどころの話ではない。
全身から変な汗が出た。
ちなみに場所は、富山県高岡市。
近隣の人は気を付けてほしい。
なぜなら、声は消えたのではなくて遠ざかって去って行ったから。
アレは移動している。
たぶん今も。
決して暑くても窓は開けない方がいい。
(終)