その事に気が付いてから眠れなくなった
私は都内で一人暮らしをしている
とある販売員です。
その仕事柄、
会社員の人とは休日が違うので、
日曜の夜は夜更かしをして、
月曜はお昼ぐらいに起きる、
そんな生活をしています。
だけど、
同じマンションに住む人の多くは
普通の会社員らしく、
日曜の夜は静まり返っています。
そして最近になって気が付いたのですが、
夜中3時になると徘徊する人がいるようで、
マンションの廊下を擦(す)るような音が
度々響くことがあります。
私は今、引越しを考えています・・・
部屋の間取りは玄関の隣にバストイレがあり、
バストイレの小窓が玄関に並んで付いている、
そんな感じのマンションです。
最初は新聞配達なのかな?
と思っていたのですが、
新聞配達はもう少し夜が明けてからですし、
早朝トレーニングかな?
とも思っていたのですが、
重い足取りで引き摺るように歩く人が
トレーニングするとは思えず、
リハビリかも知れないなということで、
自分の中では納得していました。
けれど、
妙に引っ掛かっていたのです。
なぜ夜中の3時なんだろうと・・・
月曜が定休日なのですが、
月に2回は木曜が休みなので、
何者かが水曜も徘徊していることは
分かっていました。
違和感を感じたのは『その歩き方』です。
ズッズッズッと足を引き摺っているのに、
妙にその速度が早いのです。
その音は私のいる階の突き当たりまで行き、
戻って来ることはありません。
そして私の部屋の前を通らないと、
エレベーターも階段も使うことが出来ません。
つまり、この階の一番奥の部屋が、
徘徊者の部屋だということになります。
ですが・・・
もう1年以上も前から最奥の部屋には
誰も住んでいないのです。
その事に気が付いてから、
あの足音を聞くと眠れなくなりました。
そして今日は何故か、
私の部屋の前で数秒ほど足を止めてから
奥の部屋へと歩いていきました。
私は今、引越しを考えています。
(終)