ある猟師と村に起こった不可解な出来事
これは、おじいちゃんに聞いた不可解な話。
おじいちゃん曰く、俺のひいおじいちゃんは住んでいた村で唯一猟師をしていたそうで。
その日もいつも通り、山の入り口にある『ニシワケ地蔵様』という地蔵に手を合わせてから山に入った。
しかし、3時間ほど歩いたところで様子がおかしいことに気づいた。
どれだけ歩いても、周りの風景が変わらないのだ。
何に化かされているのか知らんがこのままでは迷ってしまうと思い、腰に差していた枝折り包丁で木の幹に印を付けるために切りつけた。
すると、辺り一面に「ウオオオォォ・・・」と低い呻き声が聞こえたかと思うと、空から沢山の生きた魚が降ってきた。
意味の分からなさと恐怖のあまり、一目散に家に帰ったそうだが、その時は5分足らずで山を抜けられた。
後で村人たちで山を調べたが、木の幹に付けたはずの印も、降ってきた魚も見つからず、その代わりに何故かニシワケ地蔵様は首から上がスパッと切れたように無くなっていた。
そして次の日、村の全ての民家の前には、ニシワケ地蔵様の『首』と『くるぶし』が置かれていたという。
それに、どう調べてもニシワケ地蔵様の首は全て本物で、増殖したとしか考えられなかったそうで。
その後、40余りのニシワケ地蔵様の首とくるぶしは村の民話館に展示されていたが、空襲で跡形もなく焼けてしまった、とのことだった。
(終)