彼女の部屋には変なルールがあった
これは、兄貴から聞いた怪奇な話。
兄貴は片道2時間ぐらいかけて大学へ通っていたので、学校の近所で一人暮らしをしていた彼女さんの部屋に、たまに泊まらせてもらっていた。
ただ、その彼女さんの部屋には『変なルール』があったという。
「襖は閉めないでね」
彼女さんの部屋は、よくある1Kの間取り。
玄関を入ってすぐに台所と風呂とトイレがあり、その奥の襖を開けると寝室兼居間、突き当たりに窓とベランダ、という細長い部屋。
そして変なルールとは、その居間と台所の間にある襖を閉めたらダメ、という。
なんでも、閉めると台所にあるガラス製品が割れるから、と彼女さん。
特に夜その襖を閉めて寝ると、叩き壊したようにメチャクチャに割れて掃除が大変だそうで。
ふとした時につい閉めてしまうと、慌てて開けても既にコップにヒビが入っていたりするのだとか。
けれど、ガラスが割れる音はしないし、なぜ割れるのかは分からない。
それに、それらは置いてあった場所で割れるのだとか。
襖とガラスの因果関係に気づくまで、なんだか色々と大変だったそうで。
引っ越して来た初日に、実家から持って来たガラスの食器類が全部割れてえらいことになったり、冷蔵庫の中で焼肉のタレの瓶が割れてえらいことになったり、コンタクトの予備の眼鏡にヒビが入っていて使えなくなったり・・・。
兄貴は「襖は閉めないでね」ということしか聞いていなかったけれど、プレゼントに彼女さんの好きな猫の絵が描いてあるガラスのコップをプレゼントしたところ、この怪奇な現象を詳しく説明されたという。
それを聞いた兄貴は、どんな風に割れるのか検証したいなと思ったらしいけれど、彼女さんが嫌がったので確かめたりはしなかったそうな。
その代わりに、うっかり閉めないように襖を外してあげたらすごく喜んでもらえたとか。
余談になるけれど、その彼女さんは卒業後に就職のため転居して、ついでに兄貴と別れた。
(終)