アパートの自室に突如現れた人形が
私は都内で事務職をしています。
先日、仕事終わりに同僚の女の子たちと一緒に飲んでから、板橋にある自分のアパートに帰ってきた後のことでした。
壁際にある机に座り、手鏡を持ってメイクを落としていたのですが、ふと鏡に何かが映った気がして鏡の角度を変えたのです。
その途端、私の後ろのタンスの上から、私を見下ろしている日本人形と目が合いました。
真っ白な顔をして赤い着物を着た日本人形が、タンスの上に立って俯き加減に私を見ていたのです。
ただ、私の部屋には日本人形などありません。
「ひっ!」と叫んで手鏡を落としてしまった私は、もの凄い速さで振り向きました。
しかし、タンスの上には何もありませんでした。
とても怖かったのですが、子供の頃から科学雑誌などが好きな私はオカルトを信じないたちで、何かの拍子にありもしないものを見てしまったのだと自分を納得させ、その晩は寝ました。
それっきり何もないまま一週間ほどが過ぎました。
そしてある夜、お風呂から上がった後に発泡酒を飲みながら、小さな液晶テレビでニュースを見ていた時のことです。
私は視界の中に何か違和感を感じました。
とても嫌な予感がしたのですが、目が勝手にそちらへ向いてしまいました。
カーテンを閉め忘れた窓にそれは映っていました。
ベッドの上に立ってこちらをじっと見つめる日本人形。
私はいてもたってもいられず、ベッドの方を見ないようにして携帯電話だけを持って家を飛び出しました。
その日から同僚の家に泊めてもらっており、引越し業者に全て依頼し、作業が終わるのを待っている状態です。
アパートの大家さんは心当たりがないと言います。
それなら、一体あの人形は何なのでしょうか…。
(終)