未知の存在がアパートに忍び寄った瞬間
これは、今まで心霊系を信じていなかった僕が、初めて恐怖体験に直面した話です。
僕は今年から大学生となり、3月半ばに上京し、実家を離れてアパートに住むようになりました。
ちょうど同じ高校だった親友のシンゴ(仮名)も近くの大学に進学し、お互いのアパートからそう遠くない場所に住んでいました。
なので、留守でも遊んで待っていられるようにと合鍵を交換し、お互いに一人暮らしを楽しんでいました。
そうやって1ヶ月ほど過ごした先週のある日のこと。
午後4時過ぎ、僕がバイトの面接を終えて帰宅すると、アパートの鍵が開いていました。
(お、遊びに来てたのか)
そう思い、「おー!シンゴー!来てたのか!」と玄関で叫ぶと、奥の部屋から「おー」と返事が聞こえました。
アパートの間取りは、玄関を開けるとすぐ右側にお風呂、左側にトイレ、正面がダイニングで、襖を挟んだその奥に居間があります。
勝手に入り込んで遊んでいるのはお互い承認済で、すでに数回は勝手に上がって遊んでいることがありました。
(よっしゃ、ウイイレのリベンジだ!!)※ウイイレ=ウイニングイレブン(ゲーム)
ぱぱっと靴を脱ぎ、ダイニングを通って襖を開けましたが、居間には誰もいません。
「野郎!どこに隠れやがった!!」
演じながら布団をめくったり、押し入れを開けたりしてシンゴを探しました。
ですが、見つけることが出来ず…。
僕は、「いいや、降参。どこに隠れた?」と音を上げました。
しかし、返事はありませんでした。
(聞こえなかったのか?ふざけてるのかな?)
そう思い、「おーい!」ともう一度叫びました。
すると、玄関脇のトイレから「いまいくよ」と声が聞こえてきました。
ただ、それはシンゴのものとは違い、女性の声でした。
僕は一気に頭が真っ白になり、トイレの方に目をやりました。
トイレの中の電気が点いています。
帰って来た時には点いていなかったはずです。
全身の毛が逆立つように鳥肌が立ち、背中がゾクゾクし、一瞬にして汗が滲み出てきました。
(あれは何だ?あれは誰だ?どうすればいい?)
頭がパニックになっていると、ギィ・・・・ィ・・・・・とトイレのドアがゆっくりと開き始めました。
恐怖で頭がおかしくなりそうでした。
(怖い!見たくない!!)
そう思いながらも、トイレから目を逸らすことができません。
ドアが半分、45度くらい開くと、隙間から伸びる光に人の影が見え始め、その影の主がゆっくりとトイレから出て来ようとしているのがわかりました。
僕は恐怖に震えながら、ただただ見ていることしか出来なくなっていました。
死ぬとも憑かれるとも言えませんが、“何かされる”という直感がした後、部屋がグニャリと変形しているように感じました。
トイレから伸びる影が大きくなっていき、今まさに出てくる寸前…と同時に、玄関がガチャッと勢いよく開けられ、「よー!帰って来てたのかー」とシンゴが現れました。
その瞬間、トイレの電気がフッと消えました。
僕はそのままベッドに膝から倒れ込み、安堵から叫びました。
シンゴに「どうした?」と尋ねられ、今起こったことを説明し、ドアが半分以上開いたトイレを二人で確認しました。
しかし、何もおかしなところはありませんでした。
結局、その日からシンゴのアパートに泊めてもらっています。
親にも相談してアパートを変えることを決め、大家さんに全てを話した上で敷金等を返してもらえないかなど、現在進行中です。
(終)