樹海に肝試しへと向かった4人だったが

 

私は樹海で一生忘れられない

不思議な体験をしました。

 

それは何年も前の夏、

まだ私が短大生だった頃。

 

同じ短大に通う友達4人で

樹海に行った時の話です。

 

突然、友達の一人が樹海に

肝試しに行こうと言い出し、

 

私と他のみんなは面白そうだったので

軽い気持ちでOKし、

 

私たち4人は車に乗って

樹海へ行くことになりました。

 

そう、4人で・・・。

 

樹海に着いた頃、

 

辺りはすっかり暗くなっていて

樹海に入るのを躊躇ったけど、

 

せっかく来たので、

私たちは車を道端に停めて、

 

持ってきた懐中電灯を手に持ち

樹海の中へ入ることにしました。

 

入ってみてビックリ。

 

森の中が思った以上にゴツゴツしていて、

なかなか前へ進めなかったのです。

 

40メートルほど進んだところでギブアップ。

 

友達も戻ろうと言い出し、

みんなで戻ろうかと話をした時、

 

突然、どこからともなく

 

お坊さんの御経を読む声が

聞こえてきたのです・・・。

 

なんだか怖くなった私たちは、

急いで来た道を戻ろうとしたのですが・・・

 

今度は岩陰で首を吊っている

女の人を発見してしまい、

 

もうみんなパニック状態になり、

無我夢中で道路まで走って出ました。

 

やっとの思いで道路に着いた私たちは、

すぐに警察へ電話をしました。

 

それから警察を待つことになったのですが、

一人いないことに気づいたんです・・・。

 

樹海に行こうと言い出した

M子がいないのです。

 

M子はまだ樹海の中に?

 

そう思った私たちは、

怖くて中に入れなかったので、

 

大きな声でM子の名前を叫んだのですが、

M子からの返事はありませんでした。

 

音が聞こえた場所からは、

 

道路が微かに見えていたので

迷ったとは考えられず、

 

怪我でもしたのかな?

・・・などと考えているうちに、

 

警察の人が来てくれて事情を話し、

 

とりあえず私たちが入ったルートを

警察の人と行くことにしました。

 

女の人の死体は見つかったのですが、

M子が見つかりません。

 

それからも警察の人が沢山来てくれて、

M子を一緒に探してくれました。

 

しばらくすると警察官の人が、

私に妙なことを質問してきました。

 

「あれ?いま行方不明なのは、

F本M子さんだよね?」

 

そう質問された私は「そうです」

と返事をしたら、

 

ある免許証を見せられました。

 

それは、

紛れもないM子のでした。

 

M子が見つかった!

そう私が思った瞬間、

 

警察官が信じられない事を

口にしました。

 

「この免許証、

 

君たちが見つけた首を吊った

女性の物なんだよね」

 

・・・ウソだ。

 

私は信じられなかったので、

 

首を吊って亡くなっていた女の人を

友達と一緒に見てみることに・・・。

 

M子でした。

 

私たちは呆然となり、

しばし無言の時が流れました。

 

私たちは警察の人に、

 

M子は同じ短大の生徒だと

言ったのですが信じてもらえず、

 

結局、虚言として片付けられ、

 

そのうえ説教までされて

家に帰らされました。

 

地元に着いた私たちは、

 

早速、学校で撮った写真を

見てみることにしました。

 

そしたら、どの写真にも

M子の姿はありませんでした。

 

いつも一緒にいたはずなのに・・・。

 

手帳を見ても駄目で、

 

他の友達に聞いても、

誰もM子を知る者はいませんでした。

 

あの記憶は何だったんだろう・・・。

 

私たち3人は、

ただ途方に暮れるしかありませんでした。

 

しかし、

どうしても納得のいかなかった私たちは、

 

それから一ヵ月後、

 

免許証に記載してあったM子の実家へ

行くことを決意しました。

 

M子の家に着いた私たちは、

早々とM子の家のチャイムを鳴らしました。

 

すると、

 

M子の母親が出てきて、

今までの事情を話し、

 

家の中へ入れてもらうことになりました。

 

もう、M子のお葬式は済ませてあり、

灰になったM子がそこにいました。

 

それで母親と話しているうちに

意外な事実が分かり、

 

私たちは驚きました。

 

幼い頃から幼稚園の先生に

なりたかったM子は、

 

幼稚園の教諭資格が取れる

私たちが今通っている短大に、

 

その年の春から入学が決定

していたらしいのですが、

 

家庭の事情で入学を

断念せざるを得なくなり、

 

仕方なく働くことになったM子は

不幸にも会社では上司にいじめられ、

 

長年付き合っていた彼氏に

突然の別れを突きつけられ、

 

夢と心の支えを失ったM子は

酷く落ち込み、

 

自ら命を絶ってしまったそうです。

 

それを聞いた私たちは、

 

ひょっとしたら友達になっていた

かもしれないM子の位牌を前に、

 

悲しくなり涙が止まりませんでした。

 

幼稚園の先生になりたいという

M子の想いが、

 

私たちを樹海へと連れて来たのでしょうか。

 

私たちはそう思いながら、

家路へと向かいました。

 

(終)

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