妙なものが見えるようになった女子学生
私の知人から聞いた話です。
知人の叔母さんは、
いわゆる霊感の強い人で、
他人の霊的な相談に乗ったりしており、
遠方からも手紙で相談を
持ちかけられるような人でした。
そんな叔母さんのもとに、
昔届いた手紙の内容として、
知人が語ってくれた話です。
手紙の主は女子学生です。
ある日、彼女が学校からの帰りに
自宅の辺りまで来た時のことです。
誰かが彼女の自宅へ
入っていくのが見えました。
弟か、外出していた母が
帰って来たのだな、
と彼女は思ったのですが、
家に着くと玄関の鍵は
閉まっていました。
しばらくして帰って来た弟に、
さっき一度帰って来たか?
と尋ねましたが、
知らないという答えでした。
彼女は不思議に思ったものの、
見間違いだったのだろうと
思うことにしました。
しかし、
それから彼女は家の中で度々、
妙なものを見ることになったのです。
それは夕飯時のことです。
彼女が居間にいて、
ふと台所を見ると、
炊事をしている母親の後ろ姿が
見えたのですが、
なんと母親が二人いるのです。
彼女が驚いていると、
そのうちの片方がくるりと
こちらを振り返りました。
それは母親ではなく、
顔に目鼻が無く、
口だけのものが笑っているのでした。
また別の日、
彼女が風呂に入り、
洗髪をした時のことです。
風呂場には彼女一人だけのはずなのに、
湯船の中でぽちゃんと、
水の跳ねる音がしました。
顔を上げて湯船を覗き込むと、
水面にあの顔が映っていたそうです。
またある日のこと。
彼女の母親は自宅で
洋裁教室を開いており、
足踏み式のミシンが置いてある
部屋がありました。
夜遅くにその部屋から
ミシンを踏む音が聞こえてきたので、
まだ生徒さんが残っているのかな、
随分と遅いな、
と思って彼女は部屋を
覗き込みました。
すると、
一台のミシンに女性が向かっているのが
見えました。
ただその様子は普通ではなく、
首と腕をだらりと下に垂らしたまま、
足だけがめちゃくちゃな勢いで
ミシンを踏んでいるのです。
しばらく様子を見ていると、
その女性がくるりと振り向きました。
またあいつでした。
それはすっくと立ち上がったかと思うと、
彼女に向かって走り出して来たのです。
彼女は急いで自分の部屋に
逃げ込んだそうです。
私が聞いた手紙の内容はここまでです。
それを見てしまうのは家族の中でも
彼女だけだそうで、
『助けてほしい・・・』
という内容だったということです。
(終)