いじめられっ子の地道な復讐計画

 

小学生の頃、

 

5人ぐらいで構成された

いじめのグループがあり、

 

そのターゲットになっていた

A君という男の子がいた。

 

勉強もスポーツもダメダメで、

いつもヘラヘラしているから、

 

いじめられやすかったのだと思う。

 

性格もおとなしく、

いじめられても反撃せずに、

 

「やめてよぅ、くちゃーに」

 

と言うだけだった。

 

この『くちゃーに』というのは

彼の口癖のようで、

 

いじめられている時は、

いつも決まり言葉のように言っていた。

 

ある日、

気の毒に思った僕は、

 

彼にどうしてやり返さないのか

聞いてみた。

 

彼はヘラヘラ笑いながら、

 

「平気だよ、だって･･･」

 

と言うだけだったが、

その目は笑っていないように思えた。

 

なんにしろ、

 

人の目を見て鳥肌が立ったのは、

後にも先にもその時だけだった。

 

翌年に彼は転校し、

みんな彼のことは忘れていった。

 

それから20年ほどが経ち、

 

同窓会でほどよくアルコールが

まわってきた頃、

 

「そういえば･･･」

 

と友人が話し始めた。

 

どうもA君をいじめていたグループが、

全員亡くなったらしい。

 

しかも、

全員自殺だったと･･･。

 

その友人も詳しくは知らないが、

いじめていたグループの連中は、

 

中学に入った頃から精神的に

おかしくなり始め、

 

精神病院へ強制入院させられたが、

半年以内に院内で自ら命を絶ったらしい。

 

そんなことがあったのか･･･

なんか怖いなと感じた時、

 

彼の口癖を思い出した。

 

『くちゃーに』

 

（終）

解説

『くちゃーに』の意味とは、

 

「くちゃーに」

　↓

「くちあに」

　↓

「口 兄」

　↓

『呪』

 

つまり、

 

A君はいじめられる度に、

呪いをかけ続けていた。

 

いじめていたグループの連中が

中学に入った頃、

 

その呪いの効果がようやく現れ始めた。