勘違いした母からの愛情表現
俺は現在20歳。
大学の受験に二度も失敗し、
今はニートをしている。
俺はそんな状態なのだが、
弟は現役で東京の大学に合格し、
一人暮らしをしている。
でも弟は最近、
実家に帰ってくるなり、
俺を見下した目で見ている気がする。
くっそう。ムカつく。
そんな俺を見下した目に耐えかねて、
ついに喧嘩になったんだ。
いつも勉強ばかりしていた、
軟弱な弟に負けるわけがない。
腕力も俺の方が圧倒的に強い。
ムカつく弟を殴り飛ばしてやった。
でもまだ腹の虫は収まらなかった。
この気持ちをどこにぶつけようかと、
母に相談した。
そしたら、
「もうすぐ会えなくなるんだから。
お互い嫌な思い出を残さないように、
仲良くしなさいよ」
って言われた。
たぶんだけど、
弟は長くないんだろうなと思った。
だから仲直りしておいたよ。
あいつが死んだあとで、
後悔とかしたくないからさ。
俺は、母に弟より愛されているのが、
最近びしびしと伝わってくるんだ。
だってさ、弟が怪我した時よりも、
俺が怪我した時の方が保険金が多いんだ。
俺がどれだけ大切にされているかが分かる。
「あなたの将来のためだから」
と弟には一切勧めていない保険を、
俺にはたくさん入れてくれる。
それに毎晩「がんばってね!」と言って、
甘いココアを勉強中にくれるんだ。
なんだか最近頑張り過ぎているせいか、
日に日に体調が悪くなっているんだけど、
母の愛に答えるためにも頑張らなきゃ、
と思っている。
俺はマザコンと言われても仕方ないけど、
母を愛しているんだ。
(終)
解説
出来の良い弟とは正反対に、
二浪してニートの出来の悪い俺。
最近たくさんの保険を勧められ、
加入させられている俺。
そして母からは、
「もうすぐ会えなくなるんだから・・・」
と毎晩『毒入りココア』を与えられながら、
日に日に体調が悪くなる俺。
もうすぐ会えなくなるんだから・・・
先が長くないのは弟ではなく、
残念ながら俺の方である。