異国で出会った女の子からの手紙

手紙

 

これは、学生時代にアジアの某国を旅行していた時の話。

 

ビザの必要無い範囲でのんびり気ままに旅をして、最後に滞在した宿での出来事。

 

その宿には小学校低学年くらいの小さな女の子がいたのだが、いきなり初対面の俺の手を掴んで何処かへ連れて行こうとする。

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元気に成長してくれていたら

手を引かれて着いた先は、駄菓子屋のような商店だった。

 

女の子はアイスを手に取り、支払いは俺・・・。

 

店主の苦笑いを見るに、どうやら常習犯のようだ。

 

「なんてクソガキだ!」と思ったが、女の子の方は俺を気に入ったらしく、部屋へ遊びに来るようになった。

 

天気が悪かったせいで、2泊3日のうち、無理に散策に出た数時間以外の大半を、子守をして過ごすハメになった。

 

第一印象は最悪だったが、あれ以来悪さはしないし、一緒に居るうちに情も湧いてきて、それなりに楽しい時間だった。

 

そしてチェックアウトの日、女の子が手紙をくれた。

 

幼い子供が書いた異国の文字。

 

何て書いてあるのか、サッパリ分からない。

 

だが、俺はとにかく嬉しくて、彼女の目線までしゃがみ感謝の意を示すと、抱きつかれキスをされた。

 

帰国後、手紙の内容が気になった俺は、知り合いのツテで留学生に翻訳してもらい、その内容に絶句した。

 

『とても楽しかった。好きになったから殺せなかった。一緒に死にたかった。さようなら』

 

子供が書いた拙(つたな)い文字と文章だから、真意は不明だし自分の翻訳も自信がない・・・と留学生はフォローしてくれたが、彼の表情を見るに、恐らく内容に間違いはなかったと思う。

 

僅かな時間だったが一緒に過ごした感じでは、少しおませな至って普通の女の子に見えたが、まさか自殺を考えるほど不遇な生活をしていたのだろうか?

 

それとも不治の病に冒されていたのか?

 

それからしばらくは、様々な妄想や不安、恐怖が入り混じったモヤモヤした日々が続いた。

 

最悪、彼女の実態と生存確認をしに行こうとも考えたが、怖くて出来なかった。

 

あれから数年、未だにふとした時に彼女のことを思い出す。

 

元気に成長してくれていたら良いのだが。

 

(終)

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