天井におかっぱ頭の女の子の影
これは、友人が体験した話。
幼い頃、部屋で寝ていた彼女は怒鳴り声で目が覚めた。
階下で両親がケンカをしている。
(嫌だなあ・・・)
そう思ってふと天井を見上げると、闇の中に何かがゆらゆらと揺れていた。
家族がバラバラになるよ
それは、おかっぱ頭の女の子のシルエットだった。
(ああ、あれは自分の影だな・・・)
明かりのない部屋の中、布団で横になっている自分の影が天井に映り込むはずがないのだが。
しかし、おかっぱ頭の幼い彼女は漠然とそう考えて、また眠りに落ちていった。
それからしばらく経ったある晩。
彼女はまた両親が言い争う声で目が覚めた。
(嫌だなあ・・・)
ため息まじりに天井を見上げると、そこにまた影があった。
ゆらゆらと揺れる影。
よく目を凝らして見ると、その影は手や首などが所々ちょん切れている。
(バラバラの影だなあ・・・)
そのうち、ウトウトして寝入る。
そんなことが何回か続いたが、やがて両親が離婚し、彼女は母に連れられてその家を引っ越してからは、その現象を見ることもなくなった。
月日が経った。
成人式の日、彼女は母にささやかな感謝会を開いた。
自分を立派に育ててくれた母と二人きりで楽しく食事をして、語り合った。
その時、ふと彼女は昔に見た『影』のことを思い出し、母に話した。
「こんなことがあったんだよ」
すると、話を聞いた母の顔が見る見る青ざめていった。
具合が悪いのかと聞くと、そうではないという。
「どうしたの?」と問い詰めると母は、「叔母さんが伝えに来てくれてたんだね、きっと」と不可解なことを言う。
詳しく聞けば、「あんたの家族がバラバラになるよって、伝えに来たんだよ」と。
母の叔母、つまり彼女にとって大叔母にあたる人は、幼い頃に変質者に誘拐されて殺されたということだった。
遺体は、頭や手足が胴体から切り離された状態で見つかったそうだ。
母に見せてもらった古い写真の大叔母は、確かにおかっぱ頭をしていた。
そして母の家系の人間は大きな転機がある際、何かしらの形で大叔母に出会うという。
(終)