ダイスケ君と一枚の古いハンカチ
これは不思議な出来事でもあり、なんとなく切なくなってしまう話。
両親は私が赤ん坊の頃に離婚して、私は父親に引き取られた。
それでも4~5歳頃までは母親とも会っていたらしいが、やっぱり会わなくなるとすっかり存在を忘れていた。
というのも、小学校3年生までずっと父親にも、一緒に住んでいた祖父母にも、「お母さんは死んだ」と言われていたからだ。
でも色々あり、3年生の夏休みだったか、母親が生きていることを聞いて再会した。
どこからか現れたハンカチ
それからも何度か会うようになり、母親や母方の家族との色々な思い出話を聞くようになった。
そしてその頃に初めて、私には『ダイスケ君』という従兄弟(母兄の息子)がいたことを知った。
彼は小学校低学年の頃、家の裏庭でなわとびで遊んでいる時に、なわとびが鉄棒だったか木の枝だかに引っかかり、首吊り状態になってしまい・・・。
母親が見つけた時は、もう窒息して亡くなっていたそう。
後に、その事故が原因で叔父夫婦は離婚した。
母親によると、私達はとても仲が良かったらしいが、私には全く記憶になかった。
それから何年か経ち、だんだんと母親との連絡も途絶えがちになってきた中学生の頃のこと。
私の部屋で洋服ダンスの引き出しを探っていたら、“一枚の古いハンカチ”が出てきた。
童話『長靴をはいたネコ』のハンカチで、微妙に黄ばんでいた。
私の物ではないし、過去に一度も見たことのない物。
ただ、そのハンカチには亡くなった従兄弟の名前があった。
しかしその家に住むようになるまで、少なくとも二回は引越しをしている。
その間、そんなハンカチは見たことないし、母親からも誰からも貰った記憶もない。
それに、彼が亡くなってから10年近く経っているはずの頃。
本当に不思議だったが、仲が良かったという従兄弟の物だと思う。
幼くして亡くなった彼の物。
そして、今も捨てられずにまだ取ってある。
母親は再婚して他に家庭を持ち、次第に私ともだんだん疎遠になり、今は全く連絡を取ることはなくなったので細かい事情は確認できなくなってしまった。
でも、どう考えてもそのハンカチは、どこからか現れたとしか言いようがない。
今でも時々そのハンカチを取り出して見るが、色んなことを想い、なんとなく切なくなる。
(終)