テトラポットの合間から人の顔

灯台

 

これは、昔に一度だけ幽霊と思しきものを見たことがある話。

 

当時は渥美半島に住んでいて、付き合っていた彼女と半島先端の白い灯台まで、バイクの二人乗りで出かけた時だった。

 

渥美半島(あつみはんとう)

渥美半島は、中部地方の太平洋側にある半島である。愛知県の東南端から西南西に突き出すように延びている。全長は約50キロメートル、幅5~8キロメートルと細長い。(Wikipediaより引用)

 

時間は夜の11時過ぎだっただろうか。

 

堤防沿いを走っていて、もう少しで灯台という時に、テトラポットの合間から『人の顔だけ』が下からライトで照らされたようにボォっと浮き上がっていた。

 

ソレは、無表情で口を大きく開けていた。

 

俺には霊感はないが、なぜか直感的に「あっ、これは水死した人だな」と思った。

 

ただ、それを彼女に言っても怖がらせるだけなので黙っていた。

 

そんなものを見た後だから、灯台に着いてもすぐ帰りたくなり、急いで立ち去ろうとしたのだが・・・。

 

すると彼女が、「来た道を戻るのやめようよ・・・。灯台の手前辺りを通った時に寒気がして、すぐ耳元で『おいでぇ』と声が聞こえてきたの・・・」と泣きそうな顔で言ってきたのだ。

 

彼女はフルフェイスのヘルメットを被っていたにもかかわらず。

 

後日、昼間にその辺りを通ってみたのだが、もし人が居れば絶対に顔以外も見えるロケーションだった。

 

それに、彼女だけに聞こえた声や、目撃した俺自身も顔しか見えなかったことから、「あれはやっぱり幽霊だったんだな」と思った。

 

(終)

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