身代わりになってくれたお不動さんの像
これは、祖父から聞いた話。
祖父は山歩きが日課で、常に『お不動さんの小さい像』を持っていた。
ある日、熊に出会い、そして襲われ、気がつくと病院のベッド上だった。
肺の1センチ上まで切り裂かれていたが、運良く助かった。
命が助かったのはお不動さんのおかげ、と祈りを捧げようとしたら、持っていたお不動さんの胸部には、刃物で切ったかのような傷跡が付いていた。
その傷跡は、自分の怪我と全く同じ位置にあり、像の背部の炎まで達していた。
祖父は、お不動さんが自分の身代わりになってギリギリ助けてくれた、と思ったそうな。
そして、「熊の爪が振りかぶられた瞬間、初孫を見るまでは死ねん!思ったら、電波を受信したかように頭が真っ白になった」とも語っていた。
熊はその後に猟銃で撃たれたが、なぜか銃弾以外の穴のような傷跡も付いていたという。
祖父は、「お不動さんの独鈷杵攻撃に違いあるまい」と言っていた。※独鈷杵(どっこしょ)=法具
あとがき
爺ちゃんのお不動さんの像は独鈷杵を持っていた。
なにか由来はあったのだが、難しい言葉が多くてよく分からなかった。
そんな俺に、「オリジナルメイドのカスタム仏だからな」と要約してくれた。
またその像は、海洋堂風のようなリアル的なものでなく、円空仏のようなものだった。※リンク先はWikipedia
身体守りとしてのご利益はピカイチだったそうだが、爺ちゃんと一緒に納棺したので、もうその像はない。
(終)