行方不明になったままの女の子
遥か昔、俺が通ってた幼稚園に
かわいい女の子がいた。
ある日、その子が昼間にふと、
いなくなってしまった。
先生たちが慌てて探したけれど、
見つからなかった。
騒ぎになって警察も来たけど、
見つからなかった。
とうとう、迷宮入りになってしまった。
去年の夏、猛暑の真っ盛りに、
俺は営業サボって公園をブラついてた。
アスファルトに陽炎が立つほどの、
クソ暑さだ。
誰もいない公園には、
原色の花が咲き乱れている。
陽炎の向こうから、
幼稚園の制服を着た女の子が
ひとり歩いて来た。
俺を見上げて聞いた。
「○○先生、まだあたしのこと
探してる?」
俺は何のことか分からず、
「ごめんね。○○先生って、
知らないんだ」
俺がそう言い終わらないうちに、
女の子は駈け出して、
いなくなってしまった。
○○先生。
俺の幼稚園の先生と
同じ名前だな。
優しい先生だった。
制服も俺の幼稚園時代のと、
ちょっと似てた。
懐かしいもんだ。
よく似た子がクラスにいたな。
ミハルちゃん、て言ったっけ。
俺は、ミハルちゃんが
行方不明になったままの
女の子である事を思い出した。
その年の秋に、
幼稚園の解体工事があって、
床下から、子供の肋骨と
右足の骨だけが見つかった。
(終)