突然の吐き気から凄まじい快感へ
これは、山仲間の体験話。
秋の山で単独行していた時のこと。
夜、焚き火の前に座っていると、突然猛烈な吐き気に襲われた。
とても堪らず、夕食に食べた物をすべて盛大に地面の上に吐き戻してしまう。
嘔吐(えず)き終わると、吐き気は嘘のように消え去った。
大きく息を吐いて安堵していると、背後の藪から声がする。
「あ~、すっきりした」
慌てて藪の中を確認したが、そこには誰の姿も見つけられなかった。
その夜は落ち着かないまま過ごし、朝を迎えたのだという。
次の夜、昨晩のことを思い出しながら、そこはかとなく不安になっていると…。
背後で何者かの気配が沸いた。
振り返るよりも早く、背筋を電気が走り抜ける。
“凄まじい快感”が彼に襲い掛かったのだ。
「!!!!!」
声にならない叫びを上げて、意識がブツリと途切れる。
気がつけば、テントの前で俯せに倒れていた。
短い時間だが失神していたらしい。
しばらく立ち上がることが出来なかったそうだ。
「おれいね」
何処からかそんな声が届いたが、気にする余裕もなかったという。
「凄かった…。本当に凄かった。今も思い出そうとするだけで、色々と大変なことになりそうなんだ。下着とズボンを川で洗う羽目になったのは哀しかったけど…」
切なそうにそう語る彼の前で、私は一体どんな顔をしていたのか。
今でもそれが気になって仕方ない。
考察(あとがき)
吐くのを手伝った体になった為、次の日の快感は「お礼ね」だったのか?
しかし、成人男性が失神するほどの快感ってどんなものなのだろうか。
(終)