「かくれんぼしようよ」と声はするが・・・
これは、知り合いの話。
小さい頃、彼はよく家の裏山で遊んでいた。
一人で遊んでいた時に、怖い思いをしたことがあるらしい。
土いじりをしていると、いきなり後ろから声をかけられた。
「かくれんぼしようよ」
驚いて振り向いたが、辺りには誰もいない。
それでも声は聞こえる。
子供のようだ。
「最初は僕が鬼になるよ。100数えたら探すからね!」
声は一方的にそう宣言すると、数を数え始めた。
「い~ち、に~い、・・・」
軽くパニックを起こしかけたが、それでも「隠れなくては!」と強く意識した。
幸い、見つかり難そうな岩陰を知っていたので、そこに隠れたそうだ。
しばらくすると、「どこにいるのかな~?」と楽しそうな声が追ってきた。
隠れている岩の前を何かが通り過ぎる。
ズンズンと重げな足音が聞こえた。
「どこ~?」という声が、異様に高い位置から降ってくる。
(僕のお父さんより、ずっと大きい!)
そう気がついてしまうと、もう歯の根も合わないくらいの震えに襲われた。
結局、彼は日が暮れて家族が探しに来るまで、隠れ場から動くことが出来なかった。
えらく怒られたそうだが、それでもホッとした気持ちの方が強かったという。
現在、彼は地元の消防団に入っており、時々行方不明者の捜索にも駆り出される。
そして不明者が子供だった時は、「例のかくれんぼで捕まったんじゃないか?」という気がしてならないのだそうだ。
(終)