村外れの山道で見つかったおかしな骸
これは、知り合いから聞いた話。
彼の父がまだ幼い頃、村外れの山道で『首吊り死体』が見つかった。
壮年の男性で、間違いなく村の者ではない。
それに、その骸を引き取りに行った青年たちが、口を揃えておかしなことを言ったという。
曰く、“遺体を枝から降ろそうとした時、何か抵抗しようとする力を感じた”のだと。
強い力ではなかったが、少しだけ山の方へ引っ張られるような気がしたらしい。
それを聞いた大人たちは、皆が皆、次のように呟いたのだという。
「逃げられなかったんだな」
彼の父は大きくなるまで知らなかったそうだが、その道をさらに奥へ進むと小さな集落に繋がっていたそうだ。
そこは十人足らずの本当に小さな集落で、住民は引きこもりのような状態だったらしく、まったく外との交流はなかったという。
遺体を返しに行った村人たちは、ただ引き渡したと言った後は口を噤(つぐ)んだ。
今思えば、村側もその集落とは関わり合いになりたくない雰囲気だったらしい。
ただ、彼の父が村を出るまでに、いつの間にか件の集落は廃れてなくなっていた。
住民がいつ、どこに去ったのか、誰も知らないと聞く。
(終)