お祭りのクジ引き
俺が小学校低学年の頃
だったと思う。
夏休みに毎年、
近所のそこそこ大きな商店街で
お祭りがあった。
俺はお袋に連れられて、
ワタアメとかタコヤキとかを
食べるのが好きだった。
何より、電気店のクジ引きが
すごく楽しみだった。
一等がワイドテレビや
冷蔵庫とかでさ。
それで、
その年のお祭りは、たまたま
親父が仕事終わるの早くてさ。
弟も連れて3人で
遊びに行ったんだよ。
で、いろいろ食べ歩いて、
電気店のクジ引きに行ったんだ。
もちろん親子3人とも、
ハズレのティッシュだったな。
その日はそのまま家に帰ったが、
次の日もお祭りはあった。
(大体、3日ばかり続くものでしょ)
親父は仕事が休みで
昨日のことで疲れたのか、
覚えている限り、ずっと
寝ながらテレビ見てたと思う。
ここで強調したいのは、
親父は一歩も外に出ていない!
ってことだ。
お袋もね。
俺も、家で弟と遊んでた。
確かあれは辺りが暗くなってきた頃
だっただろうか。
クジ引きの電気店の人
(親父の顔見知りでもある)が、
大きな段ボール抱えて
やって来たんだよ。
「今年はお宅が当てるなんて!
あらためておめでとう!」
なんて玄関先で言われて、
両親ポカーンとしてるんだよ。
段ボールには、最新式の
冷蔵庫が入ってたんだからさ。
(偶然なのか・・・。
我が家の冷蔵庫は故障していた)
電気店の人に言わせれば、
親父が今日、
クジ引きで一等を当てた。
それで、後で配達してくれるよう
親父が言ったんだってさ。
ありえないでしょ、
そんなの。
家族全員、
一歩も外出すらしていないんだから。
親父がクジ引きなんて、
出来るはずがない。
結局、「ご苦労様です」とか言って
冷蔵庫を貰っちゃったんだけど・・・。
両親揃って首傾げてた。
親父には双子の兄弟なんかいないから、
見間違えるなんてこともない。
それに、後で我が家に
届けるようにも言っている。
不自然なことだらけだ。
クジを引いた親父は
何者だったのだろう。
例の冷蔵庫は、別の県に
引っ越す時に捨ててしまった。
(終)