あの水風船が娘を守ってくれたのかな

水ヨーヨー

 

これは、去年の夏祭りで娘に『水風船』を買ってあげた時の話。

 

その水風船はカラフルな模様で、上の部分を輪ゴムで縛ってある至って普通のもの。

 

お祭りは道路を歩行者天国にして開催されていた。

 

水風船はそのお祭りの出店で買った。

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萎んじゃって危ない

水風船を売っていたお店の人は学校帰りっぽい女の子で、ジャンパースカートの制服を着ていた。

 

娘に買ってあげようとしたら電話が鳴ったので、私は「好きなのを選んで」と言って電話に出た。

 

電話をしながら、娘とお店の女の子が仲良さげに喋っているのを見ていたら、娘は萎(しぼ)んで小さくなった水風船を選んだ。

 

それはないだろう・・・と思いつつ電話を続けていると、女の子が「お父さん、娘さんの水風船が萎んじゃって危ないので膨らましますね」と言った。

 

危ないって何が?と思った私は、「いいですよ、他のにします」と答えたが・・・。

 

「でも、娘さんこの風船じゃなきゃダメなんですって。だから膨らませたいんです」

 

「?」

 

「このままじゃ娘さん本当に危ないのでお願いします」

 

「???」

 

正直、危ないって何?この子ヤバい子かな?と思っていた。

 

でも、どうしても娘の選んだ萎んだ水風船を膨らませたかったみたいなので、私も「お願いします」と答えた。

 

そうして普通のサイズに膨らんだ水風船を買い、お祭りも見飽きたので帰ることに。

 

国道沿いの夜道を娘と手を繋いで歩いていると、コンビニの前を通りかかった。

 

そして駐車場の前を歩いて通り過ぎようとした時、コンビニに入る車がやってきた。

 

しかしその車は、私と娘が気付いて避ける前に突っ込んできた。

 

娘の方に向かって。

 

嘘だろ!娘が轢かれる!と思うが、体が動かない。

 

何も出来ずにただ立っている娘を、進んでくる車のライトが明るく照らしていた。

 

私の視界も真っ白になり、娘が死ぬかもしれない、と思った。

 

だが、何も起こらなかった。

 

車は何事もなく私と娘の横を通り過ぎ、駐車し始めた。

 

確かに真っ直ぐ私たちに向かって来ていたのに・・・。

 

私は茫然とした。

 

直後、突然娘が泣き始める。

 

「どうした?」と聞くと、「風船われちゃった」と言っている。

 

風船?持っていたじゃない?と思って娘の手を見ると、本当に持っていなかった。

 

どこだ?と辺りに目をやると、先ほどの車のタイヤの近くで弾けて萎んでいた。

 

起きたことはこれだけだが、私はあの水風船が娘の身代わり(お守り)になってくれたのかな、と思った。

 

水風船が膨らんだら膨らんだ分だけ、命を守る力のようなものが強まったのではないか、と。

 

そして、娘と仲良くなったあのお店の女の子が娘の命を守ってくれたのかな、と思った。

 

ちなみに、半年前に引っ越したので、もうその地域には住んでいない。

 

考察

それは人の運命を示す水風船だった。

 

しかし、娘さんは萎んだものを選んでしまった。

 

「この子の命は萎んで(死んで)しまう」

 

そう思った女の子は、空気(命)を再び吹き入れてくれたのかな。

 

(終)

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