溜まり場となっていた廃神社にて 2/4

廃神社

 

「お、落ち着けよ」

 

と言ったんだけど、

 

AとBには、俺やCの存在すら

目に入っていない感じで、

 

木箱をガンガン地面に

叩きつけたり踏んづけたり、

 

引っ張り合いをしてる。

 

ヤバイなコレと思って

さすがに止めに入ったんだけど、

 

Aはガグガッと、

 

口から訳の分かんない声

というか音を出して、

 

俺を突き飛ばした。

 

俺とCだけじゃどうしようもないから

他の連れを呼ぼうにも、

 

当時はまだ誰も携帯電話を

持っていなかった。

 

誰かを呼ぶにも、

その場を立ち去らないといけない。

 

俺もCも一人になりたくないけど、

 

仕方ないからCとジャンケンして

俺が勝ったので、

 

俺が他の連れ達を呼んで来る

ことになった。

 

もう夕方5時過ぎくらいで、

 

少しずつ夕陽が落ちかけて

暗くなり始めたので、

 

Aたちの行動や周りの雰囲気が、

凄く気味悪く感じた。

 

2年間溜まり場にしていた場所が、

まるで別の空間に思えたんだよね。

 

AとBがコンビプレーしながら、

 

木箱を必死に開けようとしている

異常な姿を見ながら、

 

「じゃ、すぐ戻る!」

 

と走り去る俺に、

 

「頼むから早めに帰って

来てくれよ~」

 

とCは泣きそうな感じで

返事した。

 

神社の階段をダッシュで降りて、

 

自転車を置いてある場所まで走って、

 

自転車に跨いで走り出そうとした時に、

ギョッとした。

 

さっきのおばあさんが、

 

神社の向かい側の道で

ニタニタ笑っていた。

 

俺の方じゃなく、

神社方向を見て笑っていた。

 

俺は神社に戻るわけにもいかず、

 

おばあさんに話かけよう

なんてことも怖くて出来ず、

 

必死に自転車を漕いで、

 

神社から一番近い、

Dの家に向かった。

 

家から出てきたDは最初、

 

「は?なにそれ(笑)

 

と言って笑っていたが、

 

俺が必死に説明していたら、

ようやくヤバイ状況に気づいた。

 

「早く行こう!

いや、Eも呼ぼう」

 

とDの自宅からEに電話して、

 

「早く家に来てくれ!」

 

と頼んで、

Eの到着を待ってたんだけど、

 

Eは20分以上待っても来ないし、

 

外がかなり暗くなり始めた

ことに焦って、

 

Dの弟に、Eが来たら神社に

来るように伝言を頼んで、

 

俺とDだけで神社に戻ることにした。

 

2人で自転車を漕いで

神社に到着した時は、

 

さっきいた場所に

おばあさんはいなかった。

 

俺とDは神社の階段を

駆け上がった。

 

以上、記憶はここまで。

 

次の瞬間、

俺は病院にいた。

 

えっ?!

 

と思って起き上がろうとしても、

起き上がれない。

 

一生懸命に起き上がろうとしたら、

 

足にギプスがはめてあって、

腕には手首に包帯。

 

急に、全身に鈍い痛みが走って、

 

「うぉぉ」って小さい声が

自然に出て、

 

寝たまま苦しんでいたら、

 

しばらくして病室に

看護婦が入って来て、

 

そこからもよく覚えてないけど、

 

とりあえず家族が来たり

先生が来たりして、

 

慌しい感じになった。

 

どうやら交通事故に遭って、

4日間も目を覚まさなかったらしい。

 

「Aは?Bは?神社は?Dは?」

 

と捲くし立てて聞く俺に、

 

母さんは最初は、

 

「今はいいの。

今はゆっくり休みなさい」

 

とか言って

はぐらかしてたんだけど、

 

何度もしつこく聞いたら、

 

「A君もB君も亡くなって・・・

D君は重体で・・・」

 

と言われた。

 

俺はただ意味が分からず

ポカーンとしていた。

 

結局、AとBとD、

そして俺の4人が、

 

歩道を自転車に乗って

帰っていたら、

 

トラックが突っ込んで来て、

AとBは即死。

 

Dは意識不明の重体。

 

(後日、図書館で地元新聞を読んだら

確かにそう書いてあった)

 

駆けつけた担任の先生は

ボロボロ泣きながら、

 

「よかったなぁよかったなぁ」

 

って言ってくれてるんだけど、

 

「おかしい・・・。

 

俺はDと一緒に神社へ

向かってたんだけど・・・。

 

AとBは箱を開けようとしていて、

 

俺はDに助けを呼んで

神社へ行ったんだけど・・・」

 

と説明した。

 

支離滅裂だったのか、

親や先生は理解してくれなかった。

 

その日の夜は寝たり起きたりを

繰り返しながら、

 

連れが死んだショックより、

(もちろん悲しかったけど)

 

「おかしい・・・」

 

という感情が強かった。

 

(続く)溜まり場となっていた廃神社にて 3/4へ

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