溜まり場となっていた廃神社にて 3/4

廃神社

 

翌朝一番で、

CとEが見舞いに来た。

 

Cは泣きながら、

 

「すまん・・・

 

俺、30分待っても

お前が帰って来ないから、

 

AとBを置いて逃げた・・・」

 

と言った。

 

俺は「あ~そうなのかぁ」としか、

返事が出てこなかった。

 

せめて神社付近で待っておけよ、

と思ったけど言えなかった。

 

続けてCは、

 

「あの後、Aが、

 

『もう少しで開く!開く!』

って叫び出したんだよ。

 

Bも『開く!開く!』って・・・。

 

それが怖くて逃げたんだ」

 

と言った。

 

Eは、

 

「よく分かんないけど、

 

Dの家に行ったら

Dの弟から、

 

神社に行くから来てくれって

お前らが言ってたって聞いて、

 

すぐに神社に行ったんだけど、

 

お前らいなくて、

別のがいたから仕方なく帰ったら、

 

次の日に事故ったって聞いて

驚いたよ」

 

「別のって?」

 

「いつも溜ってる場所に

何人かいて、

 

暗くてよく見えなかったけど、

お前らの自転車はないし、

 

雰囲気がなんかおかしかったから

すぐ帰って来たんだよ」

 

CとEは神妙な顔をしたまま、

20分くらい話して帰っていった。

 

その後は、

 

刑事が来て色々聞かれたから

正直に全部話したけど、

 

神社の話より事故の時の話しか

興味がないみたいで、

 

「事故前後は全く覚えてないです」

 

って言ったら、

残念そうに帰っていった。

 

後日、

 

何度かまた刑事や相手の保険屋や

弁護士が来て話を聞かれたけど、

 

神社の件より、

 

やっぱり事故の時の話しか

興味ない感じだった。

 

事故を起こしたトラック運転手は

精神的な疾患を持ってたらしくて、

 

事故後に逃走して

自殺を図ったらしい。

 

でも死にきれずに病院にいて、

会話にならない状態だって聞いた。

 

重体だったDは結局、

あの後に亡くなった。

 

Dの弟は俺を恨んでいるみたいで、

 

退院後にDの家に線香を

あげに行った時も無視された。

 

俺は、もともと東京の大学に

進学が決まっていたから、

 

1月から学校に登校して、

3月に高校を卒業した。

 

周りは妙に優しくしてくれたけど、

 

俺は気まずくて、

CやEとは距離を置いた。

 

Cは4年前に自殺したらしいけど、

 

俺は長い間

地元に戻ってないから、

 

疎遠になっていて

詳しい話は知らない。

 

色々あったから

地元とは距離を置いてきたけど、

 

昨年11月に親父が亡くなり、

12年ぶりに地元へ帰った。

 

大学卒業の時に一度だけ帰ったけど、

日帰りで1時間位しかいなかったから、

 

じっくり帰るのは12年ぶり。

 

葬式など全部終わって、

すぐ東京に帰ろうと思ったけど、

 

母さんがなんか不憫で、

ギリギリまで実家にいる事にした。

 

昼間はやることもないので、

 

12年ぶりに徒歩で田舎町を

ウロウロしていたら、

 

急にあの廃神社が気になった。

 

本当は思い出したくもないんだけど、

その気持ちに反して、

 

神社が気になる!

行きたい!

 

と強く思った。

 

あの時の関係者といえば、

もうEだけなんだけど、

 

12年間も疎遠になっていたし、

連絡もし難い。

 

仕方なく1人で行った。

 

歩いてみると、

 

神社は家や学校から

かなり遠かったんだなぁと思った。

 

神社に比較的近かった

行きつけのスーパーは、

 

潰れてビルになっていたり、

 

近くにコンビニや大きなショッピング

モールやマンションが出来てたり、

 

12年前とは景観がかなり変わっていた。

 

神社はまだあった。

 

あの日以来の神社だった。

 

俺は急に怖くなった。

 

心臓が高鳴り、

手のひらは汗でジトッとしてきた。

 

引き返そうと思ったけど、

 

わざわざここまで歩いて来て、

今さら引き返すのも抵抗があり、

 

思いきって恐る恐る、

階段を上った。

 

変わらない風景のはずだった。

 

でも変わっていた。

 

神社は綺麗になっていた。

 

賽銭箱や社や石造りの道も

綺麗になっていた。

 

近くに若い女の子が、

ホウキを持って掃除していた。

 

可愛い娘だった。

 

俺は人見知りするタイプだから、

 

普段は絶対に声をかけたり

しないんだけど、

 

神社のこの変貌っぷりを

目の当たりにして、

 

迷わず声をかけれた。

 

(続く)溜まり場となっていた廃神社にて 4/4へ

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