帰省した実家の父の書斎で寝ていると
実家は熊本市内で、
俺の部屋は2階でした。
一昨年だったかな。
長期休暇で実家に帰った時のこと。
2階の二部屋とも改装工事中だった為、
1階にある父の書斎で寝ることになりました。
父は昔から単身赴任ばかりで
ほとんど家に居ないので、
書斎といっても誰も使っていない
ただの空き部屋です。
帰省してから最初の2日間は
何も起きませんでした。
家鳴りは時々聞こえてきましたが、
築50年以上の古い家だしと思い、
特に気にはしていませんでした。
しかし、3日目の夜。
寝始めて意識が朦朧としてきた時に、
書斎の中で一際大きい家鳴りがしたので、
思わずガバッと起きたんです。
少し寝ぼけていたので、
何か出たか!とかじゃなく、
単に大きな音にびっくりしただけですが。
電気を点けて部屋を見ても
異変は無かったので、
また明かりを消して寝たんです。
その時に変な夢を見まして・・・
2階で寝ている夢でした。
夢の中で寝ていてまた夢を見ている
という変な状況でして・・・
耳元から変な呪文みたいなものが
ボソボソっと聞こえて目を覚ましたら、
ベランダ側のカーテンが半開きで、
そこには体の無い子供の頭が3つ、
縦に並んでじっとこちらを見つめているんです。
夢の中なんですが、
凄く再現度が高くて、
ガクブルして体は硬直していました。
すると一斉に、
子供らが人とは思えない声を放つと
夢の中で気を失ってしまって、
気づくと真っ暗な父の書斎で
叫びながら起きました。
時間は覚えていませんが、
夏で外はまだ暗かったので、
3時くらいだと思います。
何だ夢か・・・と思い、
また布団に潜って寝始めました。
書斎は6畳2間と結構広かったので、
狭い方が落ち着く俺は
襖を閉めていたのですが、
しばらくすると襖を「トン、トントン」
と叩く音がしたんです。
これにはかなり驚きました。
母は居間の方で寝ているし、
隣には誰も居るはずがないのですから。
やばい、何かいる・・・
もしかして、
さっきの夢に出てきた子供たちか?
そう思うと恐ろしくなり、
体を動かさず息を潜めて
早く立ち去ってくれと、
心の中で叫び続けました。
トン、トントンと叩いたり、
カリカリと爪で引っ掻くような音が
しばらく続きましたが、
やがて静まり、
やっと去ったかと緊張の糸が切れたのか、
一瞬で寝てしまいました。
翌朝、その事を母に話すと
急に険しい表情になり、
「ちょっと来てみ」
と俺を書斎の方へ連れて行き、
部屋のタンスを動かし始めました。
何だ何だと思ってよく見ると、
タンスの裏の壁には、
近所にある神社の御札が
貼ってありました。
話を聞いてみると、
父と結婚してまもなく今の実家を
購入したそうなんですが、
その時は母が書斎に寝ていたそうです。
そして母が経験したのは、
襖一面の大人や子供の顔から、
目だけが浮き出てこちらを見ていたそうな。
慌てて次の日に、
近所の神社に相談して御祓いしてもらい、
渡された御札を壁に貼ったそうです。
その日から、
俺も居間で寝ました。
ネットで調べてみたら、
実家がある地域は南北朝時代に
大きな合戦があった場所らしいけど、
関係あるかどうかは不明です。
(終)